フィリピン下院の議会政策・予算調査局(Congressional Policy and Budget Research Department:CPBRD)は、過度な付加価値税(VAT)の免税措置が政府歳入を大きく減少させていると指摘し、政策立案者に対して税制優遇措置の見直しおよび合理化を求めました。

政策提言においてCPBRDは、同国のVAT税率が12%とASEAN諸国の中でも比較的高い水準にあるにもかかわらず、免税対象となる財・サービスの範囲が広範であるため、実際の税収は本来見込まれる水準を下回っていると指摘しています。

また、現行の免税制度に起因する構造的な問題がVAT制度に存在しているとも述べています。

歳入の観点からは、VAT免税により多額の逸失税収が発生し、その結果、公共プログラムへの資金供給が制約されているとしています。

公平性の観点では、免税措置は本来、低所得者層の支援を目的としていますが、実際には必ずしも効果的とは言えず、富裕層も恩恵を受けていると指摘しています。調査によれば、「高所得世帯も複数のVAT免税カテゴリーから恩恵を受けている」とされ、特に私立教育や保険分野においてその傾向が顕著であるとされています。

VAT免税の対象には、基礎的な食料品、医療および教育サービス、重篤な疾病向けの一部医薬品、公共交通などが含まれます。

ただし、本研究は、食料品に対する免税が低所得世帯にとって最も大きな恩恵をもたらしていると結論付けています。これは日本の消費税議論でも問題となる所得に対する消費比率の差 (逆進性)が発生していると指摘されています。

一方、効率性の観点では、過度な免税措置の存在がVAT制度の設計を歪めていると指摘しています。本来VATは最終消費に対して課税されるべきものですが、免税措置の影響により、生産、価格形成、企業の意思決定に対して意図しない影響が生じているとされています。

これを踏まえ、同政策ブリーフは、必要不可欠な免税措置のみを維持し、それ以外については見直すことでVAT免税の合理化を図るべきであると提言しています。また、税収の向上を図るため、VAT課税ベースの拡大も併せて推奨しています。

さらに、改革にあたっては、広範な免税措置のみに依存するのではなく、低所得者層を保護するためのより的を絞った支援策、例えば現金給付(直接給付)などを併用すべきであるとしています。

本研究は、VAT課税範囲の拡大が税収の増加および制度のパフォーマンス向上に寄与する可能性があると示しています。制度の簡素化および包括化が進めば、十分な政府歳入を維持することを前提に、将来的にはVAT税率の引き下げの可能性も開かれると結論付けています。

日本においても消費税の減税が議論されにくいのは、消費税は確実に税収が見込める税源であるという利点がある反面、免税対象の見直しや軽減税率による中低所得者層と富裕層との消費税の家計負担割合の逆進性を軽減する必要性も今後、議論の対象になってきます。