フィリピン会計基準

フィリピンの会計基準はPFRS(フィリピン財務報告基準)が適用されています。PFRSはIFRS(国際財務報告基準)を基礎として構成されているため日本の会計基準とは異なる基準を設けています。PFRSはIFRSのアドプションにより国際財務報告基準との差異解消を目指しているため、2020年現在においてはPFRSとIFRSとほぼ同じ会計基準であると認識されています。また規模の大きくない会社に対しては開示内容等が簡素化されたPFRS for SME(Small and Medium Enterprises )の適用が求められています。

財務報告

現在および将来的な株主や金融機関、その他の取引先は通常、企業に直接的に内部経営資料を閲覧できないため、企業の財務内容や経営状態の把握、将来業績予測等を一般目的財務報告(財務報告)から判断することとなります。そのためこれらの利用者(株主・金融機関)は経営資源の投入、取引の開始や継続等に関連した意思決定を行うにあたって信頼性の高い財務報告を求めており、企業など財務報告書類を作成する側の恣意的な利益操作や数値の改ざんを防ぎ、有用な財務情報の作成を行う必要があります。

財務情報が有用であるためにはその財務報告が目的適合した内容であり、忠実な表現を行う必要があります。これら「目的適合性」と「表現の忠実性」は基本的な質的特性とされ、とりわけ重視されている特性です。またそれらを補強する特性として、比較可能性、検証可能性、適時性、理解可能性などがあります。これらの特性を備えた信頼度の高い財務報告の作成にはコストと時間がかかりますが、作成された財務報告から得られる社会的信用や経済的便益こそが企業にとって最も重要です。

信頼度の高い有益な財務報告の質的特性

基本的
質的特性
目的適合性 目的適合性とは、それぞれに利用者の利用目的に適った情報が記載される。
忠実な表現 完全性
利用者が理解するために必要なすべての情報を含んでいること。

中立性
財務情報の選択・表示に偏りがない。

誤謬がない
記述に誤謬や脱漏がなく、情報作成プロセスが誤謬なしに選択・適用されている。

補強的な
質的特性
比較可能性 同様のものは同様に、異なるものは異なるものとして表現されている。
検証可能性 独立したそれぞれの観察者が、必ずしも完全には一致しなくても、「ある描写が忠実な表現である」という合意に達せる。
適時性 意思決定者の決定に資することができるよう、適時の情報利用を可能にすること。
理解可能性 情報を分類し、特徴づけし、明瞭且つ簡潔に表示する形で情報が適用される。

財務諸表の構成要素

財政状態に関する構成要素

  • 資産:過去の事象の結果、企業が「支配」し、且つ「将来の経済的便益が企業に流入」すると期待される資源
  • 負債:過去の事象から発生した企業の「現在の債務」で、決済により、「将来の経済的便益が企業から流出」すると予想されるもの
  • 持分:企業の資産からすべての負債を控除した「残余」に対する請求権

業績に関する構成要素

  • 収益:当該会計期間中の「資産の流入・増価、負債の減少」のかたちによる経済的便益の増加(株主等からの拠出以外の持分の増加)
  • 費用:当該会計期間中の「資産の流出・減価・負債の発生」のかたちによる経済的便益の減少(株主等への分配等以外の持分の減少)

財務諸表の一般的特性(IAS 1号 より)

項目 内容
適正な表示 概念フレームワークに従い、取引及びその他の事象や状況の影響を忠実に表現する。
真実かつ公正な
表示のための離脱
特定の要求事項に従うと、概念フレームワークに示されている財務諸表の目的に反するほどの誤解を招くと、経営者が判断する極めてまれなケースにおいて、特定の要求事項からの逸脱が要求される。
継続企業 財務諸表の作成に際して継続企業として存続する能力があるかどうかを検討する。
発生主義 キャッシュ・フロー情報を除き、発生主義会計を用いて作成する。
重要性と合算による表示 類似の項目から構成されるグループに重要性がある場合、財務諸表上で区別して表示する。重要性がない場合、他の項目と合算される。
相殺 IFRSで要求又は許容されている場合を除き、資産と負債、または収益と費用を相殺してはならない。
報告の頻度 完全な1組の財務諸表を、少なくとも年に一回は報告しなければならない。
比較情報 IFRSで別途許容または要求している場合を除き、当期の財務諸表で報告するすべての金額について、前期にかかる比較情報を開示する。
表示の継続性 財務諸表上の項目の表示と分類を、ある期から次の期へと維持しなければならない。

財務諸表の構成要素

  • 財政状態計算書
  • 純損益及びその他の包括利益計算書
  • 持分変動計算書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 注記

 

■一口アドバイス
日本の財務諸表で見られるような損益計算書上の営業損益の表示をしたい場合、任意でそれらを小計として表示することができます。IFRSやPFRSには定められた以外の項目や区分の追加を禁止する条文はありません。但し、国際財務報告書基準や国際会計基準においては日本で言うところの営業損益とそれ以外の損益といった区分けがないため、注記にどのような項目を営業損益として加えているかという合理的な基準や具体的な項目や勘定科目、掲載の理由などを明記しておく必要があります。

機能通貨

機能通貨とは、「企業が営業活動を行う主たる経営環境の通貨」と定義されています。企業が経済活動を測定する基準となる通貨であるために、機能通貨以外の外貨での取引は機能通貨に換算して計上されます。機能通貨と外貨との間には為替レートが存在し、それら為替レートは常に変動しているため、外貨換算差損益が認識されます。日本は単一通貨のみが流通しているために機能通貨という概念はありません。

フィリピン証券取引委員会(SEC)はフィリピンペソでの財務報告を基準と定めていますが、事前に申請することにより機能通貨をフィリピンペソ以外の通貨として使用することも可能です。

機能通貨は、営業活動を行っている事業体ごとに決定される。事業体の所在地の法定通貨と事業体の機能通貨とが一致することが一般的だが、日本本社の海外支店においては、その支店の所在地の法定通貨が日本円ではない場合がある。その場合は、その支店(事業体)が法定通貨やその他の要因を検討して独自に機能通貨を決定することができる。

外貨取引における用語説明

用語 内容
機能通貨 企業が営業活動を行う主たる経済環境における通貨
表示通貨 財務諸表で表示される通貨
外国通貨 企業の機能通貨以外の通貨
為替差額 ある通貨を異なる為替レートで別の通貨に換算することにより生ずる差額
貨幣性項目 保有している通貨単位及び固定又は決定可能な通貨単位で受領する資産又は支払われる債務
非貨幣性項目 固定又は決定可能な数の通貨単位を受け取る権利

外貨建取引の報告

外貨建取引の当初認識の換算は、原則として、直物レートを用いる(IAS第21号21項)。ただし、実務上の理由から取引日の実際レートと近似する平均レートの使用も認められる。
当初認識後、各報告期間末日の換算における考慮事項は、資産及び負債の性質である。

性質別の為替レートの認識日基準

資産負債の性質 換算日
貨幣性項目 決算日レート(CR)
非貨幣性項目 取得原価で測定される項目 公正価値で測定される項目
取引日レート(HR) 公正価値が測定された日の
為替レート

※IFRSの規定では、使用される決算日レートとは、報告期間の末日現在の直物為替レートをいう。日本基準においては、決算日の直物為替レートの他、一定の基準を満たした場合に限って決算日前後の直物為替相場に基づいて算出された平均相場を用いることもできる。

貨幣性項目の外貨換算差額の認識

貨幣性項目の決済または換算替えにより生じた換算差額は発生した期間に純損益を構成する項目として認識される。

棚卸資産

棚卸資産とは以下のいずれかを満たす資産をいう。(IAS第2号6項)

  • 通常の事業の過程において販売を目的として保有されているもの
  • その販売を目的として生産の過程にあるもの
  • 生産過程やサービスの提供にあたって消費される原材料または貯蔵品

原価測定

以下の費用や支出額を原価として算定される

  • 購入原価:購入対価、輸入関税、その他の税金、運送費等
  • 加工費:生産単位に直接関係するコスト(直接労務費など)、製造間接費配賦額
  • その他の原価:棚卸資産が現在の場所や状態に至るまでに発生したその他のすべての原価
■一口アドバイス
固定製造間接費の配賦は生産設備の正常生産能力に基づいて行われ、変動製造間接費の配賦は生産設備の実際使用量に基づいて各生産単位に配布されます。日本基準の実際原価計算では間接費配賦は予定操業度を基礎として予定配賦率を使用するため、配賦基準がIFRSとは異なるので、IFRSの適用に際して差異集計とその処理には注意が必要となります。

原価算定方式

  • 個別法
  • 先入先出法(FIFO)
  • 加重平均法

※性質、使用法が類似する棚卸資産について、同じ原価算定方式で算定しなければならない。
※売価還元法は、その適用結果が原価に近似する場合には、簡便法として認められる。(IAS第2号21項)

当初認識後の測定

棚卸資産は原価あるいは正味実現可能価額のいずれか低い額により測定することとなる(低価法)。その測定には、入手可能な最も信頼性のある証拠に基づいて行われる。

会計期間

会計期間については、フィリピンでは暦年ベース(1月~12月)を採用している企業が一般的だが、付属定款に会計期末日を記載することにより、その他の会計期間を定めることもできる。また、合理的な理由がある場合(親会社と会計期間を一致させる必要がある場合など)は、付属定款を変更することで会計期間を変更することも可能となる。その場合はSECとBIRの承認を受ける必要がある。

帳簿の保存期間

以前は帳簿の保存期間は3年間でしたが、RR17-2013において帳簿や資料、申告書類等の関連書類の保存期間は申告後10年間に延長されました。これは経理や申告内容に不正があった場合、最大10年を遡って調査対象とするため、それに合わせて帳簿の保存期間が10年間に改訂されました。

税制

フィリピンにおける税制は主に国税と地方税に分類されます。フィリピンの国税は、National Internal Revenue Code of 1997 (1997年内国歳入法)が基本法規として定められており、2018年には個人所得税制をはじめとする税制改正が行われておりRepublic Act. 10963 (Tax Reform for Acceleration and Inclusion (TRAIN)) により一部改正された内国歳入法が基本法規として位置づけられており、それらはNIRC : National Internal Revenue Code(内国歳入法)とTCC : Tariff and Customs Code(関税法)の2種類の国税より構成されており、地方においては地方税(Local Government Tax)として各自治体により細則が制定されています。

税の分類

国税 地方税
法人所得税
個人所得税
譲渡所得税
相続税・贈与税
VAT
物品税
印紙税
事業税
固定資産税
住民税

個人所得税
個人所得の種類 (内国歳入法32条)

役務所得 (Compensation for Service)
手数料 Fee
給料 Salary
コミッション Commission
賃金 Wage
上記以外の役務報酬 Similar Item
事業所得 (Gross Income derived from Business)
貿易 Trade
事業 Business
専門業 Profession
資産売却等の処分益 (Gain derived from dealing in property)
利息 Interest
賃貸料 Rent
ロイヤリティー Royalty
配当 Dividend
年金 Annuity
賞金 Prizes and Winnings
パートナーシップからの分配 (Partner’s Distributive share from the net income of the General Professional Partnership)

所得に含まれないもの

  • 生命保険料
  • 保険の払戻金
  • 遺贈・相続・贈与等により譲り受けた財産(受領後の財産から得られた収入は所得となる)
  • 傷病や疾病の補償金等
  • 条約等の規定により所得とされない収入
  • 退職金・年金・恩給等
  • 外国政府等からの収入
  • 政府機関からの収入
  • 賞金等
  • 13か月給与(90,000ペソ以内)
  • GSIS、SSS、Medicare等への拠出金
  • 保有期間が5年を超える社債等の譲渡所得

 

所得税の税率
2018年から2022年までの税率表

課税所得の範囲 計算式 A+(B×C)
以上 以下 基本税額(A) 税率(B) 課税所得-控除額(C)
0 250,000 0 0% 0
250,000 400,000 0 20% X-250,000
400,000 800,000 30,000 25% X-400,000
800,000 2,000,000 130,000 30% X-800,000
2,000,000 8,000,000 490,000 32% X-2,000,000
8,000,000 2,410,000 35% X-8,000,000

※X:課税所得金額

例1. 350,000ペソの場合:0+20%×(350,000-250,000)=20,000
例2. 1,500,000ペソの場合:130,000+30%×(1,500,000-80,000)=340,000
例3. 9,000,000ペソの場合:2,410,000+35%×(9,000,000-8,000,000)=2,760,000

2023年からの税率表

課税所得の範囲 計算式 A+(B×C)
以上 以下 基本税額(A) 税率(B) 課税所得-控除額(C)
0 250,000 0 0% 0
250,000 400,000 0 15% X-250,000
400,000 800,000 22,500 20% X-400,000
800,000 2,000,000 102,500 25% X-800,000
2,000,000 8,000,000 402,500 30% X-2,000,000
8,000,000 2,202,500 35% X-8,000,000

※X:課税所得金額

例1. 350,000ペソの場合:0+15%×(350,000-250,000)=15,000
例2. 1,500,000ペソの場合:102,500+25%×(1,500,000-80,000)=277,500
例3. 9,000,000ペソの場合:2,202,500+35%×(9,000,000-800,000)=2,552,500

個人の区分け

  • フィリピン人 居住者(A)
  • フィリピン人 非居住者(B)
  • 外国人 居住外国人(C)
  • 外国人 非居住外国人 年間180日以上滞在している外国人(D)
  • 外国人 非居住外国人 年間180日以上滞在していない外国人(E)

 

課税区分

国籍 居住区分 課税対象 適用税率
フィリピン人 居住者(A) 全世界所得 累進税率表
非居住者(B) 国内源泉所得 累進税率表
外国人 居住外国人(C) 国内源泉所得 累進税率表
非居住外国人
(180以上滞在)(D)
国内源泉所得 累進税率表
非居住者
(その他)(E)
国内源泉所得 25%

居住及び非居住の区分

居住とはフィリピン国内に住居がある人のことを指し、非居住とはフィリピン国内に住居のない人を指す(内国歳入法22条)
非居住外国人であってもフィリピン国内にて180日以上滞在している外国人は、フィリピンにて事業を行っているものとみなされます。(内国歳入法25条)

能動所得(Active Income)と受動所得(Passive Income)

能動所得(Active Income)とは、自身の労働により得られる所得のことであり、給与や手数料、報酬などがそれに該当し、個人所得税は累進税率に基づき課税されます。能動所得(Active Income)に対して受動所得(Passive Income)というものがありますが、それは労働以外の手段により得られる所得のことを指し、受動所得に対しては累進税率ではなく最終源泉所得税(いわゆる源泉分離課税)の対象となります。受取利息、ロイヤルティ収入、受取配当金などが該当します。

Q&A

日本に居住する日本人が、フィリピンに投資用不動産としてコンドミニアムを3部屋購入し、2部屋を賃貸用として貸し出しています。残りの一部屋についてはいずれ売却するつもりですが誰も使用していません。

上記の説明文の日本人は居住外国人でしょうか、非居住外国人でしょうか?
非居住外国人です。理由は、この日本人はフィリピン国内にコンドミニアムを保有していますが自身の居住用として保有していません。
また、賃貸用コンドミニアムから得られる収入に対する税金はどのように算定されますか?
この日本人は非居住外国人ですので、最終源泉所得税の対象となり毎月の賃貸収入から25%を源泉徴収されます。
仮にこの日本人が空室のコンドミニアムに年間180日以上滞在していたとすると税金はどのよう算定されますか?
180日以上滞在している外国人(日本人)は、税制上、居住外国人と同様の扱いとなります。すなわちフィリピン国内源泉所得に対してのみ累進税率にて税額が算定され、確定申告が必要となります。

付加価値税(Value Add Tax: VAT)

Value Add Tax(VAT)は大統領令273号(E.O.273  1987/7/25公布)により初めて制定され、1988年1月より施行されました。VATに関する税制が施行されると同時にそれまであった同種の税制(Original Sales Tax, Subsequent Sales Tax, Advance Sales Tax, Miller’s Tax, etc.)は、VATに統合される形で廃止されています。その後、共和国法7716号(R.A.7716)により適用範囲が拡大され今日に至っています。VATとは営利目的で商品を販売・交換・バーター、賃貸、役務を提供した場合などに発生する消費税の一種です。課税標準価格は売上金額或いは取引に対する金銭的な価値を基準に課税される従価税方式により税額が決定されます。

また付加価値税は消費される地域において課税されるという特徴を有しており、これを仕向地基準(Destination Principle)または越境原則(Cross Boarder Doctrine)とも呼ばれる。付加価値税とは所得が生み出される事業が行われた国や地域に税源を配分するという考え方が一般的に認知されています。

納税義務者

国内で営利事業を営む者、事業の有無にかかわらず海外より物品等を輸入する者(内国歳入法105条)
※消費者は事業者に対してVATを支払いますが、直接的な納税義務はありません。

税率12%

課税標準額(Tax Base of VAT)

課税標準額とはVATの計算の基礎となる金額のことを言います。課税資産の譲渡(販売)や不動産や動産の賃貸、役務提供の合計価額、商品或いはそれらの金銭的価値、輸入物品が輸入された時点の価額などの受け取った或いは受け取るべき金額の合計金額のことを指します(VATの金額を除く)。

VATの性質

VATは以下のような性質を持っている。

営業税

VATは営利活動に基づく取引に対して課税されるという性質を持つ。すなわちモノに対する所有権やサービスの技術等を保有するだけでは課税されることはなく、それが営業活動により所有権が移転されたり役務が提供されるという行動に対して課税されるいわゆる営業税の性質を有している。

従価税

VATは販売した商品の金額やその金銭的価値、役務の提供により受領した金額等の合計金額を税額算定の基礎としています。

間接税

VATを負担するのは購買者や受領者、賃借人ではありますが、納税義務者は販売者、賃貸人、役務を提供した側へと移転される。すなわち本来の納税負担者と納税義務者が異なっている。すなわち本来的な納税者は消費或いは購買する側ではありますが、BIRへの納税義務を負うのは販売者、或いは提供する側となる。

営業活動に基づく取引

VATの課税対象となる取引というのは、商品や役務の提供に関しては「営業活動」(In Course of Trade or Business)としての取引が行われた時、或いは輸入の場合は、営業活動の有無にかかわらず輸入された時点で課税される。

営業活動(In Course of Trade or Business)とは、恒常的な活動(Regular Conduct)或いは商業活動、経済的利得を目的とした活動(営業活動に付随して起こる取引を含む)を指し、それらを行う事業体の性質は問わない。

すなわち株式会社のみならず、非株式会社、非営利事業体、パートナーシップや政府機関等であっても営業活動に該当する取引が行われた場合は課税対象となる。

また、非居住外国人(Non-Resident Foreign Persons)がフィリピン国内において役務の提供を行う場合、それが恒常的な活動(Regular Conduct)でなくても、商業活動或いは経済的利得を目的とした活動として認識され、VATの課税対象となる(RR 16-2005)

輸入課税について

消費税は仕向地(消費地)のみが課税権を行使できるため、輸入額の拡大は税収を押し上げる効果があり、フィリピン財務省は輸入品に対する税収への期待感から輸入課税の減免には消極的である。ただ輸入超過の状態はGDPを押し下げたり国内生産力の低下による雇用不振という国内問題の改善にはつながらないため、その対策として輸出型企業や雇用創出型産業に対しては法人所得税や輸入課税に関する減免やその他の優遇措置を導入し、GDPの向上に期待すると同時に雇用と輸出の拡大を図ろうとしていますが十分ではない。

現在、VATを含めた税制改革が国会で審議されているが財源の確保が困難であるという理由により減税には消極的な意見が大半となっている。クロスボーダー取引にかかる消費税に関する国同士の課税権がどちらにあるかという議論や考え方の指標となるのが消費地課税主義或いは仕向地基準と呼ばれるものであり、仕向地(輸入国)がすべての課税権を得る一方で輸出国は製造や物流等の一定の価値創出をしたにもかかわらずに消費税の徴税権が認められないという歪な構造が減税を阻む要因となっている。

仕向け地主義の考え方が国の税収構造に影響を与えており、フィリピンにとって輸出国への転換を阻む要因の一つとなっている。また国境を超えるB2C取引が事業者側の国で輸出免税を受けながら消費者側の輸入国で消費税等の輸入課税を受けない場合、国際的二重非課税の問題が生じる。税制の根底にある仕向地基準或いは消費地課税主義という考え方が税収を通して国の経済の在り方に影響を与える一つの例として挙げられるため、現状においてVATの税率を引き下げるという議論は棚上げされている。

加算税・罰則金等

追加の加算税や罰則金は3種類あります。一つはサーチャージ(Surcharge)と呼ばれるもので、追加の税額に対して一律25%が課税されます。一つは利息(Interest)ですが、日本語で延滞税とも訳されます。Interestは年率20%で追加の税額が課税されます。最後はコンプロマイズ(Compromise)ですが、これを直訳すると示談金や和解金という税金らしからぬ税目が付与されていますが、これはサーチャージや利息とは別途賦課されるもので、課税額に対して一定額が課せられることとなります。

申告や納税が遅れた場合、或いは税務調査で追加の納付額が発生した場合、本税と合わせてこれら3種類の罰則金の納税義務が発生します。