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フィリピンで事業を行うにあたって法人設立後も様々な法規制や現地のビジネスカルチャーを理解する必要があります。日本とは異なる商慣習や外資規制により思わぬ方針転換を迫られることも珍しくありません。企業法コンサルティングでは企業が置かれている現状を認識し、最適な決断を行うための調査とアドバイスを行います。ここでは設立前には見えなかった法律上の問題点を掘り下げて議論していくことになります。

国の重点事業に外国人や外国企業からの投資を促進するために投資奨励策が制定されており事業内容によっては法人税や関税の免除等の優遇措置が受けられることがある反面、株式の外資保有比率が40%を超える場合や特定の業種で事業を行う場合は外資規制による制限を受けることとなり、それを踏まえて事業計画の立案や、法的リスクを回避するための試行錯誤が求められます。

特にリスクの高い小売自由化法及びアンチダミー法と呼ばれる外資を規制する法律や規則に留意する必要があります。

企業法

まず「企業法」とは何かについてですが、企業を中心とした取引社会全般に関する様々な法律全体を指す名称のことです。国や地域によって企業に関連する法律の範囲や考え方が異なるため一概に定義づけはできませんが、フィリピンにおける企業法とは会社法、オムニバス投資法、外国投資法、経済特区法、金融商品取引法、アンチダミー法、小売自由化法などが該当します。またBOIやPEZAに登録した場合の外国関連会社が享受できる経済的・非経済的インセンティブや外国法人関連企業であるが故の制限業種や最低資本金、外国人出資比率制限などの外資規制など事業判断を行う上で影響力のある奨励策や法規制などはフィリピンにおける事業参入を検討する段階できちんと理解しておきましょう。

外国投資関連法

1987年 オムニバス投資法:
BOIによる投資優遇措置法⇛投資奨励分野の特定
1991年 外国投資法:
外国からの投資に対して規制する分野と、その他を明確にしたリストであるが、リスト外の業種に関しては100%外資による投資を認めている。
1995年 経済特区法:
PEZA登録企業への優遇措置法⇛経済特区という場所やエリアにおいて受けられる優遇措置
1999年改正 オムニバス投資法:
地域統括本部(RHQ)・地域経営統括本部(ROHQ)・地域倉庫(RW)への投資優遇措置法

BOIの投資奨励分野
(Investment Priorities Plan:
投資優先計画に基づく投資奨励分野)

All qualified manufacturing including Agri-processing : 適格製造業
Agriculture, Fishery, Forestry : 農業、漁業、林業
Strategic Service:戦略的サービス業
Infrastructure and Logistics including LGU-PPP : インフラ及び物流業
Health Care Service including Drug Rehabilitation : ヘルスケアサービス
Mass Housing : 集合住宅
Environment and Climate-Change : 環境及び気候変動
Innovation Driver : 革新的技術の推進者
Inclusive Business Model : 包括的ビジネスモデル
Energy : エネルギー
Exports and activities in support of Exporters : 輸出及び輸出支援活動
Activities based on special law granting incentives : 投資奨励を定めた特別法に基づく活動
Autonomous Region in Muslim Mindanao List (ARMM List) : ムスリムミンダナオ自治区における各事業

BOI登録企業への優遇措置

新規登録企業は、事業開始から6年間(パイオニア事業)或いは4年間(非パイオニア事業)、法人所得が免除(Income Tax Holiday)されます。

労務費の増加分に関する追加の課税所得控除
委託生産設備の使用
外国人監督者、外国人技術者等の雇用の承認(期限の制限あり)
繁殖用家畜および遺伝的原料の免税
輸出製品やその部品の製造、加工、組立等に資する原料、仕掛品、半製品の輸入関連税等の免除
保税工場・倉庫の利用
通関手続きの簡素化及び迅速化

PEZA対象事業

輸出用製造業
ITサービス輸出企業
観光産業
医療観光関連
農業産品の輸出製造業
農業産品のバイオ燃料の輸出製造業
ロジスティックス及び倉庫業
経済特区の開発及ぶ運営
施設業
経済特区内の水道・ガス・電気の供給及びメンテナンス業

PEZA登録企業への優遇措置
(Republic Act 7916)

財務的優遇措置

大統領令66号及びオムニバス投資法に基づく投資インセンティブ
法人所得税の100%免除
・非パイオニア企業:4年
・パイオニア企業:6年

地方税の免除(期間の定めなし)
免除期間経過後は特別税率の適用:総所得の5%が税率
原材料等の輸入時の関税や諸税の免税
現地事業者より仕入れた時のINPUT-VATの免除

非財務優遇措置

輸出入手続きの簡素化及び迅速化
非居住外国人の雇用(監督者、技術者、顧問)
特別非移民査証の発行

その他の関連法等

小売自由化法(R.A.8762)及び外国投資法(Foreign Investment Act. 1991)
外国人参入の資本金要件:
250万ドル以上の払込資本で親会社の純資産が2憶ドル以上
1店舗当たり83万ドル以上を投資すること
高級品等に特化して販売する場合は、一店舗当たり25万ドル以上の払込資本が必要となる

上記の要件を常に順守する必要がある。小売業は投資奨励の対象外です。

外資規制の適用除外要件

  1. 自身の手により製造及び加工、作成されて一般向けに販売されるもので、資本金が10万ペソを超えないもの
  2. 農家を営むもので自家栽培されたものの販売業者
  3. ホテル事業を営むもので、付随的にホテル内においてレストランを営むもの
  4. フィリピン国内で製造、加工されたもので製造者の所有する単一の施設において販売されるもの
  5. 工業施設或いは商業施設への販売であり、そこから一般大衆向けに販売されるもの
  6. 政府機関あるいは政府所有の機関或いはその関連施設へ販売するもの

アンチダミー法

この法律が規制するのは役員等の名義貸し行為により故意に外資規制を免れる行為である。外国人の出資や進出が規制された業種はネガティブリストの規制により、外国人の出資割合の上限が規制されていますが、フィリピン人による出資と見せかけて、資金が外国人や外国企業により拠出されている場合、その取引を意図的な規制回避とみなされる可能性がある。また設立された実質的な支配権を誰が保有しているかということも判断基準として斟酌されます。

外国為替規制

フィリピンでは、一般的に外貨の持込、持出、売却等は自由に行うことができるが、企業が外貨借入に伴う元金及び利息の支払を行う際には、事前にBSP(中央銀行)の許可が必要となる。また設立時や外国からの資本金や出資の受け入れ時に受け入れ資本金額の届け出をBSPに行うことにより、配当の支払いや利益の送金時に市中銀行より外貨を購入することが可能となる。外貨により出資や資本金を受け入れた際には都度、BSPへの届け出を行うことが望ましい。

■一口アドバイス
De Facto Corporation(会社法19条) 事実上の会社
設立過程の瑕疵(登録費用の未払、定款記載事項の不備等)により法律上の会社(Dr Jure Corporation)とはならないものの、設立に関するSECの規定を順守するための合理的努力がなされ、会社として事業を行っている場合、事実上の会社として認められることがある。これにより個人株主は会社債務に対する個人的責任を回避することができる。