債権と債務についての基本的な考え方と契約を執り行う上で特に問題となる債権者や連帯保証人の権利と保証人の抗弁についてご紹介しています。ご自身が債権者や誰かの保証人(連帯保証人)になった場合に、どのような権利行使や抗弁ができるのかを整理しておきましょう。一般的な契約における権利や行使の可否についての基礎的な知識をご説明いたします。
Credit and Debt (債権と債務)
Credit(債権)とは、相手方に金銭や役務の提供などを求めることができる権利のことです。そして債権を持つ人のことをCreditor(債権者)と言います。契約によって債権を得た場合は、自身の権利を主張することや相手方に対して債務履行を促すことはいつでも可能ですが、契約書や法律などに基づく要件を満たすまで債権回収のために強制力を行使することができません。つまり債権は契約時に発生しますが、債権の行使は債務不履行などの条件が必要となります。
Debt(債務)とは、相手方に対して金銭や役務を提供する義務のことを言います。そして、債務を持つ人のことをDebtor(債務者)と呼びます。Debtは契約に決められた期日までに履行する必要があります。
しかしながら経済的或いは様々な事情により債務者の持つ債務が必ず履行されるとは限りません。ここでは債権者と債務者との関係や債務がやむなく履行されなかった場合の手続き等について紹介いたします。
Creditor’s Right (債権者の権利)
Debt(債務)のDue Date(支払期日)を過ぎると、Creditor(債権者)は直ちにDebtor(債務者)に対して債務の取り立てを行うことが出来ます。
CreditorがCo-Maker/Co-Surety(連帯保証人)やCollateral(担保物件)を保有している場合、DebtorだけでなくCo-Maker/Co-Suretyに対して直接請求することやCollateral(担保物件)からCollect(回収)することもできるようになります。
Co-Maker’s/Co-Surety’s Right (連帯保証人の権利)
Before Satisfaction (保証債務履行前)
1.Exoneration(免除)
債務者が債務を弁済するだけの資力があるにも関わらずCreditorに弁済しない場合、Co-Maker/Co-Suretyは債務者を提訴し、債務の履行を命じる判決を取得して保証債務を免れることが出来ます。これをRight of Exoneration(免除の権利)と言います。しかしCreditorがCo-Maker/Co-Suretyに対して即時弁済を要求した場合、保証人はRight of Exonerationを行使できません。
After Satisfaction (保証債務履行後)
1.Reimbursement or Indemnification(返金、補償)
Debtor(債務者)に代わってCreditor(債権者)に弁済したCo-Maker/Co-Surety(連帯保証人)は、Debtorに求償することが出来ます。Co-Maker/Co-Suretyは保証債務の履行後、債務者から支払金額を債務者に請求することで支払額を回復させることが出来ます。
2.Subrogation (代位)
Co-maker/Co-Surety (連帯保証人)は、Creditor(債権者)に対してDebtor(債務者)から取り立てや担保物件からの回収を強制することはできません。しかしDebtor(債務者)に代わってCreditor(債権者)に弁済したCo-Maker/Co-Surety(連帯保証人)は、それまでCreditorが保有していた権利を引き継ぐこととなります。保証債務を履行したCo-maker/Co-Surety(連帯保証人)は、Creditor(債権者)の持つCollateral (担保物件)に対する権利をCreditorから引き継いで保有する権利が与えられます。これをRight of Subrogation (代位の権利)といいます。
Co-Maker’s/Co-Surety’s Defense (保証人の抗弁)
Contractual Defense (契約上の抗弁)
Fraud of Duress(詐欺又は脅迫)
Creditor ⇛ Co-maker/Co-Surety(債権者から保証人に対する詐欺・脅迫)
債権者が詐欺又は脅迫によって保証人を得た場合、その保証契約は保証人側から取り消すことが出来ます。
Creditor ⇛ Debtor (債権者から債務者に対する詐欺・脅迫)
債権者が詐欺又は脅迫によって債務者の合意を得た場合、保証人はその責任を負うことはない。
Insanity(精神障害)
保証人が精神障害となった場合、保証債務を免除される。
Bankruptcy(破産)
保証人が破産した場合、保証債務を免除される。
Statute of Limitation(消滅時効)
出訴期限の到来(消滅時効)にほり債務が消滅した場合は保証債務も消滅する。
Acts on the Parties (当事者の行為に基づく抗弁)
Tender of Payment(支払いの提供)
支払い提供が行われると保証債務が消滅します。その場合、誰が支払ったかは関係ありません。
Release of Debt(債務免除)
債務免除が行われると、免除が行われた部分の保証債務も免除されることとなります。しかし、債務者の債務を免除したとしても、保証人に対する権利を留保する旨を明示している場合には、保証人の債務は免除されることはありません。
Material Breach(重大な契約違反)
債権者が契約について、重大な契約違反行為があった場合、債務者の債務だけでなく保証人の保証債務も免除されます。
Modification of Contract(契約の修正)
支払期日の延期や支払方法の変更などの契約内容が変更された場合、先に締結された契約内容は無効となり、保証人の保証債務が消滅します。ただし修正後の契約において改め保証債務を行う場合は、引き続き保証人としての地位を承継することとなります。
Non-Available Defense by Co-maker/Co-Surety
(保証人が抗弁できない場合)
以下の抗弁は債務者による債権者への抗弁事由であり、保証人はそれらをもって債権者に抗弁することはできません。
- Death of Debtor(債務者の死亡)
- Insanity of Debtor(債務者の精神障害)
- Insolvency of Debtor(債務者の支払不能、Discharge in Bankruptcy破産免責など)
連帯保証人が複数いる場合は、債権者は一人の連帯保証人に対して全額請求することも、各自の自己負担割合に応じて請求することもできます。
Natural Person(自然人)と Legal Person(法人)
法律上或いは契約上の権利・義務はPerson(人)が保有しています。通常のNatural Person(自然人)だけでなくLegal Person(法人)も権利・義務を保有していると考えられています。Legal Person(法人)は自然人以外の法的主体となりうるものを指していて、通常の株式会社だけでなく、宗教法人、教育法人、財団法人や組合なども法的な権利義務を有するCorporate Personhood(法人格)を持っています。 Corporate Personhood(法人格)とは、関連する人間(株主、所有者、役員、従業員など)とは別に、自然人が享受する法的権利および責任の少なくとも一部を有するというLegal Notion(法的概念)です。
Corporate Personhood(法人格)の必要性
ではなぜNatural Person(自然人)以外にCorporate Personhood(法人格)という概念が必要なのでしょうか。それはLegal Person(法人)にCorporate Personhood(法人格)を与える利点や法的合理性があるからです。例:ある法人や団体に権利能力がないと、その法人は何人もの出資で設立されたにも関わらず、不動産や車などを購入する際に個人名義で購入する必要があります。個人名義で不動産や車が購入されてしまえば本来は会社の財産であるはずのものがその方の相続や個人の借入状況に応じて、法人とは関係のない相続人や債権者により勝手に処分されてしまう可能性があります。すなわち個人と法人の財産負債を明確に分けておかないと法人としての経済活動に支障が生じてしまう可能性があります。その法人自体に権利義務の法的主体としての人格を与えることができれば、個人と法人の財産負債を明確に区分できるだけでなく、訴訟や納税などの主体となることも出来ます。本来の自然人が持つ権利義務の一部を保有していると定義することにより円滑な社会活動が可能になるという経済的・法的合理性があるためです。