2023年3月1日、フィリピン下院法案 (HB) 第 7292 号が承認されました。同法案に基づき、フィリピン非居住者旅行者は少なくとも 3,000 ペソ相当の商品の購入に対して付加価値税 (VAT) の還付を受けることが認められます。 この法案は下院で承認され、大統領自身もこの提案を原則的に支持する姿勢を示しています。

 

外国人観光客による物品購入に対して付加価値税や消費税を還付するという概念は以前から存在します。 実際、下院歳入委員会の委員長によると、フィリピンは観光付加価値税の還付制度を持たない数少ないアジアの目的地の一つであることを指摘しています。 では近隣諸国の外国人旅行者に対する付加価値税の取扱いをいくつかを簡単に見てみましょう。

インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナムでは、一般的な付加価値税の還付手続きは以下のようになります。

1) 対象となる購入に対する税金請求書を取得して保管します。

2) 旅行書類を請求書および購入した商品(未使用のものに限る)と一緒に空港の払い戻しカウンターに提示します。

3) 税金の還付を請求します。

 

通常は現金 (現地通貨) で行われます。 また各管轄区域には、管理 (特定の「免税」店舗がある場合もあります)、購入額または税額の基準値、購入日から返金請求までの日数、およびその他に関するそれぞれ独自の手順と規則があります。 実際の返金メカニズムも含めて全体的な還付手順はどの国も似ています(クレジットカードのリバースチャージによる返金を許可しているものもあります)。

 

 

 

台湾でも上記と同様の手続きを行っているようですが、払い戻しカウンターに行かずに「E-VAT 払い戻し機」を使用するオプションもあります。

日本ではASEAN諸国の手続きとは異なる簡素なアプローチがとられていることは外国人両者の間でよく知られています。

a) パスポートの提示により、すでに消費税が差し引かれて購入代金を支払う

b) 指定された免税一括控除カウンター(店頭ではなく店内)に行って払い戻しを受けるかのいずれかです。

現在のフィリピンの VATに関する規則
フィリピン国内での商品の購入には通常 12% の付加価値税がかかります。 間接税として、VAT は購入者に転嫁され、購入者が負担します。 「付加価値」に対する税金として、VAT のコストは主に最終消費者またはエンドユーザーが負担します。

 

観光客の購入に対する VAT 還付の法案は、税法112-A条の解釈を補足したものとなっており、その主な条文は次のとおりです。

「SEC. 112-A. 観光客による付加価値税の払い戻し :  旅行者は、フィリピンの認定小売業者から購入した商品が購入日から 60 日以内に国外に持ち出された場合、その商品についての付加価値税 (VAT) の払い戻しを受けることができます。 取引ごとに購入される商品の金額は少なくとも 3,000 ペソ (P3,000.00) の閾値が設定されます。

このセクションの目的上、「観光客」とは、フィリピンで貿易やビジネスに従事していない非居住者であり且つ外国人パスポート保持者のことを指します。」

 

大統領広報室によると、外国人観光客に対する付加価値税還付プログラムは2024年までの実施を目標としており、観光客の到着を増やす取り組みの一環として法案が提出されています。 これに相当する上院法案は今のところ承認には至っていませんが、上院にて協議されている考慮すべきいくつかの重要な点は以下の通りとなっています。

1) 税務手続き負担 : 観光客の支出を増やすという最終目標を念頭に置き(これにより、小売業者がより多くの売上を上げ、経済を成長させることができます)、小売業者が遵守しやすい規則や要件を確保する必要があります。

2) 利便性: 外国人観光客の観点から見ると、VATの還付を受けるために膨大な時間や煩雑な手続きが必要となる場合、制度が施行されたとしても、申請を思いとどまらせて、ひいては消費意欲をそぐことになります。  フィリピンにおける付加価値税率が12%とASEAN諸国の中で最も高いこともフィリピンを敬遠する動機になり得ます。

3) 保障措置: 返金プログラムとして、この措置には政府の年間予算に資金が組み込まれる必要があります。 他の還付措置と同様、透明性とガバナンスに関するポリシーは厳格に施行されなければなりません。

このような議論がなされていますが、外国人観光客へVAT還付の同期は外国人からの観光収入の増加という経済的動機を目的としており、付加価値税の本来のあり方である、消費地課税主義といった概念によるものではありません。 また還付にかかる予算が議論の対象になるなど、制度の施行にかかる財源確保が困難であるという問題となってきます。

 

外国人へのVAT還付制度の施行にはまだまだ紆余曲折が予想されています。