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フィリピンに進出しようとする企業の大きな関心事の一つに税金の問題が挙げられます。税金と言っても様々な種類がありますが、中でも企業にとって大きな影響を与える項目として、法人所得税、VAT(付加価値税)、事業税、源泉所得税などが挙げられます。今回は法人所得税の中でも税務調査時に問題となる過大な内部留保金に対する不当内部留保金課税と資本と負債の不均衡なバランスが生じさせる過小資本税制についてお話してみたいと思います。


不当内部留保金課税制度(IAET : Improperly Accumulated Earnings Tax)

不当留保金課税制度 (IAET) は、通常は企業が業績を上げて利益を出すと配当が期待されますが、あえて配当することなく留保することにより株主が受け取る利得に対する課税を回避する目的を持つと判断された法人に問う制度が適用されます。

毎課税期間、企業内に留保された課税所得に対して10%の追加税金を求められます。内国法人が株主 への課税を回避するために不当に利益を留保し、配当金に対する課税回避を図る企業に対する罰則金的側面を持ちます。

利益の不当留保の明白な証拠:剰余金累計額が払込済資本を超えている場合、事業上、合理的に留保する目的や理由を示す必要がある。もし合理的な理由がない場合、利益の不当留保とみなされることとなります。

 不当留保金課税の対象から除かれるケース
• 公的機関が保有する会社及び関連会社 (Publicly-held corporations)
• 銀行その他金融機関
• 保険会社
• 経済特区企業等 (PEZA企業等)

同族経営が行われている会社が適切な時期に配当を行わないことの理由として課税を回避が目的とBIRに判断された場合に税務調査時に課税されます。この法律の趣旨は不当に利益を内部留保することによる株主利益に対する課税回避を防止することにあります。

 

証券取引委員会(SEC : Securities and Exchange Commission)の定める内部留保制限規定

BIRの定める税制とは別の規定として、最も重要な企業法の一つである会社法(Corporation Code)の定めにより、株式会社は資本金を超える剰余金を保持することが禁止されています。(会社法第42条)  この規定はすべての株式会社に適用され、IAETの免除対象であるPEZAなどの経済特区に進出する企業であっても適用を受けます。例え外国上場企業の100%子会社であっても適用されます。よって、この規定に従わず超過剰余金を保有する場合、財務諸表の注記において超過剰余金の使途 (配当、拡張投資等) を開示する必要があります。これらの罰則金は主に、SECのMonitoringの手続きの中で財務諸表の適正表示に関する評価過程で違反かどうかがあ判断されます。

不当留保金課税制度の廃止 (RR5-2021)

不当留保金課税は2021年の法人所得税の改正(CREATE, RR5-2021)により廃止されましたが、同様の規定がSECのMemorundum Circular 11-2008にも規定されており、SECも留保金の上限と配当に関して税制とは独立した独自の規定があります。税制上の規定がなくなったからと言えども留保金が無制限に認められるということではなく、SECの留保金規定を考慮しておく必要があります。

 

過小資本税制

国際税務では、移転価格税制やタックスヘイブン対策税制と同じくらい重要な税制上のテーマとして取り扱われるのが、過小資本税制過大支払利子税制です

企業の資金調達手段で代表的な方法は、借入と出資であり、通常の場合、借入金にかかる通常の利率で算定された支払利息は損金算入できます。しかし、国内子会社が、海外親会社等から資本金に比べて多額の借入を行い、「支払利息の損金算入」を利用して、意図的に租税回避行為が行われることを防止するための法制度となります。資本金と借入金の比率を一定の範囲に留め、借入にかかる支払利息に対する損金算入制限を設けることで、会社の課税所得が利息の支払いにより過剰に圧縮されることを防ぎます。これが「過少資本税制」の趣旨となります。

しかしフィリピンでは過少資本に対して課税する税法ルールは現時点ではありません。

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