フィリピンにおいて事業を行うすべての企業は財務諸表の作成が義務付けられています。 財務諸表の作成において留意すべき点はあらゆる項目が適正かつ適時に収益費用及び貸借対照表残高を表記することが重要です。

とりわけ収益認識のタイミングはPAS (フィリピン会計基準)及びIFRS (国際財務報告基準)の収益認識基準に準拠する形でその金額や認識時期が適正に表記される必要があります。

収益(売上)認識において、まず顧客との間でどのような契約が締結されるかという「契約の特定」がなされます。その特定された契約により自身の履行義務とその対価を確認し、その履行義務の進捗(充足)のタイミングに合わせる形で対価としての適時収益認識が行われます。

 

収益認識にかかる適正性と適時性及び網羅性を確認するためには受注及び販売から売上金の回収に至るまでの販売プロセスを確認したうえで、IFRS等の会計基準及び税制上の収益認識との整合性や関連性を評価します。また売上にかかる帳票類(請求書や納品書、領収書)とうの徴憑類具備されているかや金額の合理性及び妥当性なども監査の対象となります。それと決算期に近い取引がある場合は、収益認識の時期が適正であるかどうかの確認とオフィシャルレシートなどの法定書類が適切に発行されているかなどを総合的に評価することとなります。

収益認識は会社の販売管理や在庫管理などの内部統制とも密接に関連しています。 たとえ客先から受注したとしてもそれらの注文が適正に処理されて販売行動につながっているか、在庫などの棚卸資産は帳簿上の残高と実残高と一致しているか、売掛金は適正に入金されているかなど一連の流れを監査する上で、時として販売の計上もれや売上金の横領、在庫の横流しなどの不正行為が発覚することもあります。 とりわけ海外子会社や支店などの場合は、管理が現地の人の手に委ねられたり、現地人同士のやり取りや取引が内密に行われることもあります。 その場合は管理担当する人員のモラルや自覚の欠如、知識や経験不足、法令無視や業務規程違反などの低いコンプライアンス意識など社内の業務フロー、マネジメントや内部統制手続き、人材採用に問題があると判断される可能性があり、とりわけ海外では本社の管理が行き届かない中での運営が求められるため、財務諸表上の問題は組織運営の在り方の問題へと発展拡大することもあります。

海外進出を始めて最初からすべてのことが順調に運営できたという会社は皆無に近く、ほぼすべての会社で様々な問題が毎日のように発生し、それに対処すべく日々奮闘するのが駐在員の現状ではないかと思います。

 

売上認識における問題は売上予測値と実額差異や原価率の変動、売掛金の発生から回収までのキャッシュ・コンバージョン・サイクル (CCC)異常値などの分析手続きと試査等により発見することができますが、これら財務諸表上の問題点は事業の運営フローや会社の内部統制の問題の発見へとつながる可能性があるため、会計監査は決して投資家や銀行、行政機関等への対外的な説明目的や監査は義務だからという法的要件を満たすためだけになされるわけではありません。

海外進出される企業の担当者様は、自社の会社の事業プロセスの改善や不正行為の発見や防止するという目的で監査を社内目的のためにお役立ていただけると幸いです。