日本企業を初めとした外国企業がフィリピンに進出される場合には、この国の為替管理制度にも留意が必要です。フィリピンにおいてフィリピン中央銀行(BSP:Bangko Sentral ng Pilipinas)が為替管理制度を管轄していて、フィリピンペソ(Php:Philippines Pesos)から外貨に交換するときにこの国の為替管理制度により制限があります。ここでは少し詳しく為替管理制度についてご紹介したいと思います。


フィリピンペソは原則的に国外持ち出し不可

フィリピン国内に5万ペソ以上の持込およびフィリピン国外への5万ペソ以上の持ち出しについてはBSPの許可が必要となります。(外国為替取引マニュアル4条1項)。

また外貨についてフィリピン国内への外貨の持ち込み額或いは国外への外貨の持ち出し額に関する規制はありませんが、1万ドル相当額を超える外貨を持ち込みまたは持ち出す場合には、BSPに申告をしておく必要があります。(外国為替取引マニュアル4条2項)

特にフィリピンペソなどの東南アジアで使用されている通貨は日本円やUSドルなどの国際通貨に対してローカル通貨と呼ばれます。通貨に対する国際的信用度が高くなく、どこかの国が通貨危機に併せて売られて通貨価値が暴落してしまう可能性があります。それを予防してペソ防衛をする意味でBSPは通貨保護政策を行っているのです。

 

居住者による外貨取得

居住者が通商以外の方法で外貨を取得する場合、その外貨はどのような目的にも自由に使用することができます(外国為替取引マニュアル1条)。

居住者が貿易などの通商や貸付・投資以外の目的(教育費用、医療費、旅費、国外居住者への給与等)で非居住者に対する支払いのために外貨を購入する場合、BSPの事前承認なしで銀行で支払いに必要な外貨を購入することができますが、銀行では購入目的などを明確にする必要があり、個人に対しては一日当たり50万ドル相当、法人等に対しては一日当たり100万ドル相当を超過する場合、支払金額や支払先に関する証拠書類(エビデンス)の提示も求められます(外国為替取引マニュアル2条)。

 

フィリピン中央銀行(BSP)への届出が必要な取引と必要書類

外国投資家が資本の再配分及び資本から発生した配当や利益、収益金を送金するために外国通貨を認可代理銀行などから購入する場合、外国投資を中央銀行(BSP)に登録しておく必要があります(外国為替取引マニュアル32条)。

貿易外取引 :通商、投資、貸付以外(教育費用、医療費、旅費、国外居住者への支払いをする)

金額に応じて以下の書類をBSPに提出する必要があります。

1,000,000 USドル超: 外貨購入申請書、証拠書類などの必要書類
1,000,000 USドル以内: 外貨購入申請書

 

貿易取引–:輸入決済

金額に応じて以下の書類をBSPに提出する必要があります。

1,000,000 USドル超: 外貨購入申請書、証拠書類
1,000,000 USドル以内: 外貨購入申請書

 

資本取引・親子会社間の金銭貸借(親子ローン)

資本取引:1年以内にBSPへの登録が必要

短期借入:30日以内にBSPへの登録が必要

長期借入:6か月以内にBSPへの登録が必要

BSPに届出及び登録された外国投資は資本の再配分や配当、利益、収益金の国外送金をするために許可代理銀行での外貨取得が認められます(外国為替取引マニュアル40条1項、2項)。

また外国資本による対内直接投資は、必ずしも円やドル建てでフィリピンに送金してきて、銀行の口座に送金されてきた外国通貨を預金しておくことが出来ると同時に必要に応じて引出したり、必要な分だけをペソ転することも可能です。

 

仮想通貨による国際送金

フィリピンは外国に働きに出たフィリピン人から国に残った家族への仕送りに仮想通貨を使用するケースが多くなっています。その主な理由は送金手数料が非常に安いことが挙げられます。すなわち外国で仮想通貨を購入し、フィリピン国内で家族がそれを売約するといった方法で仕送りすることに使われるため、フィリピン人の仮想通貨の利用率は他の国の人に比べて高くなっているのが現状といえます。

そのためフィリピンは仮想通貨の流通を奨励している国ではありますが、現在、利用の多くは個人利用に限られ、法人が外国からの投資を受け入れたり、ローンの受け入れや返済、利益や収益金の分配などに利用することは今のところできません。金額が一回あたり50万ペソの払い出しを受ける場合には小切手あるいは口座への直接支払いのみが認められているなど、セキュリティコントロールの方法もBSPによりガイドラインが定められています。(BSP Circular 944-2017)

仮想通貨交換所ガイドラインの制定

2017年1月19日、BSP回状(Circular)第944-2017号が発行され、仮想通貨の交換サービスを行う者には、登録証(COR)を取得しなければならず、リスク管理、セキュリティコントロールおよび内部統制システムの構築が求められること等が定められた。1回で50万ペソまたはその相当額を超える金額の払い出しをする場合には、小切手または口座への直接支払の方法のみが認められている。

 

日本からの送金だけでなく、フィリピンから日本(海外)への貸付金の返済や配当、出資の本国へ還流する場合にも厳格な為替管理制度に基づく要件を具備する必要があります。また中央銀行への出資や貸付金の届出が遅れてしまった場合の対処方法が分からない場合における事後対応に関するコンサルティングも提供させていただいております。

ご興味、ご相談のある方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談、ご連絡ください。

 

 

当社はビジネスの中心地である首都マニラを拠点にフィリピンの現地企業へのM&A、技術提携や投資を検討する日本企業・日系企業のサポートを行う総合型ビジネス支援センターです。現地を知り尽くした会計士が、税務・会計・監査業務、社会保険手続き、税務、為替への対応など、様々なサービスをご提供します。日本人会計士とフィリピン人会計士が常駐し、迅速・丁寧に対応いたしますので、会計事務所をお探しならご用命ください。