外国法人がフィリピンに支店や駐在員事務所を設置する場合、事務所や拠点をたとえフィリピンに設置されていたとしてもそれは外国法人の一部とみなされるため、その事務所や拠点などの事業体に役員や執行役等を任命する必要がありませんが、居住代理人を置いてSEC(証券取引委員会)に届けておく必要があります。

改定会社法155条によると、外国法人の支店や駐在員事務所がフィリピンで事業や活動を行うための事業許可証発行の条件として、当外国法人はフィリピン居住者を代理人として指名した旨の書面をSECに提出しなければならず、SECは届け出された居住代理人宛に召喚状およびその他の法的書類を送達することができます。そのように外国企業に対するあらゆる法的書類が居住代理人に送達される可能性があり、送達された書類は、本国で外国企業に対して正当に送達されたものとして有効であると見なされます。

居住代理人としての要件はフィリピンに居住する個人(フィリピン人或いは外国人)、またはフィリピンで合法的に事業を行っている内国法人である必要があります。さらに居住代理人として登録できる内国法人は財務状態が証券取引委員会 (SEC) によって健全であると認定された良好な経済状態でなければならないと規定しています。

 

居住代理人の任命に関しては、本国における取締役会等の決議機関で正式に任命されたことを証明する必要があることと、それらの議事録や決議書類をアポスティーユや公印確認等により公文書化して提出することとなります。また取締役会等で任命された居住代理人もその役割を認諾するという旨の書類を作成することとなることに注意が必要です。

 

それとたとえ外国法人であったとしても、フィリピンに事業体が存在する限り、その事業体はフィリピンの法律を遵守することが求められます。万が一、フィリピンの法律等に従わなかった場合は、国内法に基づく法的救済が受けられなかったり、場合によってはSECにより事業許可が取り消されることも考えられます。

 

これら要件の基本原理は、フィリピン国内の債権者保護を目的とした規定となっております。外国企業は本社のある本国ではない国に事業拠点を置いていることを念頭に置いて事業を行う必要があり、SECやBIR等の政府機関及び民間取引先や従業員等、本国とは異なるステークホルダーとの関連性の中で存続しているのだということを強く認識しておく必要があります。その上で、フィリピンから得られる外国法人としての特権や利益を享受していただければと思います。

 

SECへの居住代理人の任命要件は以上となりますが、その他、社会保険の登録においても居住代理人が署名者になることなどが義務付けられているため、会社法以外の法律などにも留意してください。