相談料金:10,000円(5,000Peso)/時間(初回のみ無料)
方法:来社面談、訪問面談、Skype等

フィリピン進出を考える方々にとって設立前・事業開始前の戦略立案は最も重要となります。日本や欧米諸国にはないフィリピン独自の外資規制の他にも業種や地域により異なる様々な法規制やビジネスカルチャーが存在し、立ち上げから円滑な運営へと移行するためにフィリピンという国の詳細を短期間で体系的に把握し対応することが求められるため、設立前にフィリピン事業に必要な基礎的知識を網羅するために必要な情報を獲得されることを推奨しております。当社のコンサルティングでは企業法、アンチダミー法、PEZA法、税法、会計、労働法、必要な手続きなどの情報を短時間で身につけることができます。それにより海外進出にあたりフィリピン特有の問題点を事前に認識し対応することができるうえ、事業開始後に予期せぬ問題に直面するリスクを防止し円滑なスタートを切ることができます、また事業立ち上げ後に問題が発覚し将来的な事業方針や経営計画の大幅な修正を迫られるといったリスクを大幅に低減することも可能となります。

設立に先立って事業の運営形態や目的に沿った強固な組織体系を立案いたします。当社のコンサルティングはフィリピンにおける事業目的から組織のあり方、資本金の額、事業所の場所や立地、参入可能な業種の選定とビジネスモデルの確立、必要な許可の有無、BOI、PEZA、LGU、BIRやBSPへの届け出、事業資金の国際送金方法、人材採用、年間の行政手続きや税務の流れの把握等、運営開始までの必要な対策や準備を進めるための最も重要な情報収集の場であり、円滑な運営に必要な基礎知識やコア・コンピタンス、競争優位を確保するための最新の情報もご提供いたしております(企業関連法(会社法、外国投資法、オムニバス投資法、経済特区法、ネガティブリスト、PEZA、BOI、SEC、事業許可、バランガイ、労働法、国税及び地方税、商法、環境対策、投資環境、労務への取り組み等)。

設立前コンサルティングで得られる情報は弁護士や公認会計士が長年の経験から得られた核心的情報や知識を簡潔に網羅した内容をご提供しております。知っておくべき事業の進め方や企業関連法、税金、労務、問題傾向とその対策を横断的に網羅したフィリピン事業の神髄をお届けします。

事業形態の決定

フィリピンにおける事業目的と会社の運営方針を基にフィリピンの組織体系を決定します。
組織体系の検討が十分にされずに事業が開始されると中長期的に事業目的と事業形態の乖離が重大な問題を引き起こす可能性があるため開始前に十分斟酌することが求められる。特に現地企業との合弁やJVには慎重な対応が必要となります。

個人事業(The Sole Proprietorship)

いわゆる個人事業主である。この形態は、所有者が一人である事から法律上、個人と区別されていない。多くの小規模事業者(Small Business Owner)はこの形態を採用しているが、その理由は届出が簡単で簡略化された経営形態だからです。特徴として、初期投資が少ない、運営費用がかからない、税務上(Marginal Income Earnerへの免税等)の利点があげられ、全ての利益が所有者の取分となる。一方で無限責任であり、運転資金・資本の調達が困難であり継続性の問題があります。

いわゆる会社法人ではないので、Securities and Exchange Commission(SEC)に対する登記は求められていないものの、Department of Trade and Industry(DTI)やBIR(Bureau of Internal Revenue)への届出が必要とされる 。外国人は個人事業主形態での事業展開は不可能と思われているが、外資参入可能な業種であることや出資制限等をクリアすることで事業を行うことができます。

内国法人と外国法人 (内国歳入法 22条)

内国法人(現地法人)

フィリピン内国法人は会社法に基づき最も一般的な事業形態の一つとされる。あらゆる種類の事業に対応できる万能型の組織形態であります。外国税額控除等の優遇税制の適用が受けられ、最も制約の少ない形態ではあるが、外国人が保有する場合には会社法以外に外資規制への配慮が必要です。

外国法人

外国法人とはフィリピン以外の国の法律により設立された法人のことである。またその国においてフィリピン資本或いはフィリピン人が活動を行うことができることができる場合、同様にその国の外国企業もフィリピンにおいて事業ライセンスを取得することを条件として事業活動を行うことができます。

  • 居住外国法人:フィリピンにおいて事業活動を行う外国法人
  • 非居住外国法人:フィリピンにおいて事業活動を行わない外国法人

パートナーシップ (Partnership)

パートナーシップとは二人以上の複数の者が共同所有者として営利目的事業を営む社団(Association:人の集合体)のことである。パートナーシップ契約が成立した時点でそれは一つの法的人格を有することとなり、パートナーシップの名前で法的行為を行うことができます。パートナーシップは制度としてSECへの登録が必要だが、たとえSECへの登録が完了或いは申請が承認されなかったとしてもパートナーシップは法人格を有することができます。また法人の存続期間は50年以内(改正会社法において存続期間の上限は撤廃された)という会社法上の規定があるのに対して、パートナーシップには存続期間を設けていません。存続期間はいわばパートナーの合意がある限り存続可能であるといえる。解散事由として支払不能(破産)、パートナーの法的能力の欠如や死亡、解散合意などが挙げられる。またこのパートナーシップ持ち分は他者に譲渡することは可能だが、譲り受けた人は自動的にパートナーとなるわけではなく、パートナー全員の同意が必要となる。また株式会社との一番の違いは、パートナーは無限責任を負うことが一番の特徴です。

■一口アドバイス
法律上の会社(De Jure Corporation
国内法の規定に従い適法に設立された会社
事実上の会社(De Facto Corporation)(会社法19条)
設立過程に何らかの瑕疵があるため法律上の会社とはならないが、設立に関する法律の規定を順守するための誠実な努力がなされ、会社として事業活動を行っているので、事実上、会社としての存在が認められる会社。会社の存在を認めることにより、株主は、会社債務に対する個人的責任(Personal Liability)を回避することができる。

法人の種類(内国歳入法 22条, 会社法3条)

  • Stock Corporation:株式会社会
  • Non-Stock Corporation:非株式会社(教育機関、宗教法人、社会福祉法人、市民団体、政治組織等)
  • Partnership:パートナーシップ
  • Joint Stock company:合本会社
  • Joint Account:ジョイントアカウント
  • Association:組合法人

 

組織形態

内国(現地)法人 (Corporation)

外国法人はフィリピンに現地子会社の設立が認められている。現地子会社はフィリピン会社法に基づいて設立された内国法人であり、フィリピン国内において外資規制に抵触しない限りあらゆる業種の事業を営むことができます。一般的にフィリピン現地子会社は親会社との資本関係が強く、外国親会社或いは外国関連会社の支配のもと活動を行う事業形態です。

現地支店 (Branch Office)

フィリピンの現地支店はSecurities and Exchange Commission (SEC) より認められた組織形態の一つである。外国法人により出資された事業組織であり、内国法人同様にあらゆる事業活動がフィリピンで認められる。外国法人による100%出資された法人とみなされるため、外国投資規制に配慮が必要な組織形態であり、外国税額控除等の税制優遇を受けられない組織形態でもあり、申請時に親会社の財務内容等が精査されるため設立手続きに相当な時間がかかります。

駐在員事務所 (Representative Office)

駐在員事務所もまたSecurities and Exchange Commission(SEC)により認められた組織形態の一つであり、フィリピンにおける外国法人として認識されますが、駐在員事務所は主に外国法人の現地拠点としてフィリピンの顧客への商品やサービス内容の周知や販売促進、情報収集、海外の上位組織や本社のアドミン業務を行うことを目的として設立されます。フィリピンにおいて法人税やVAT等の対象となる収益活動を行うことはできないものの、Cost Centerとしての機能は有し、その過程で源泉徴収義務者としての納税義務が発生することがあります。

地域運営本部:Regional Operating Headquarter(ROHQ)

地域運営本部はアジア太平洋地域及びその他の地域の子会社、支店、関連会社等のモニタリング機能としてだけでなく、各地域のアドミニストレーションや人材統括という意味においての位置づけとなることが多いとされます。内国法人とは異なり子会社及び関連企業に対する定められた範囲の業務に限りサービスを提供して収益を上げることが認められ、ROHQの課税所得に対しては10%の軽減税率が適用されます。

地域本部:Regional or Area Headquarter 

地域本部は多国籍企業においてアジア太平洋地域及びその他の地域で活動する子会社、支店、関連会社等のアドミニストレーションや人材統括等の管理機関としての機能を持つものの、本部自体はフィリピン国内において収益活動を行わない事業体のことです。

財団法人・非株式非営利法人 (会社法 87条)

財団法人・非株式非営利法人はフィリピンにおいて非営利の活動(チャリティー、慈善事業、宗教活動、科学、文化的活動)を行うことを目的として設立された事業体である。非営利活動を目的とする財団法人や非株式非営利法人であってもSEC(Security Exchange Commission)や活動に関連する政府機関の承認が求められます。活動内容やそれぞれの設立要件を満たすことなどを条件として、法人税やその他の税金が免税されます。

株式の種類 (会社法6条~9条)

普通株式 (Common Share/Stock)

株主に対して特権や制約(限定)のない標準となる株式のことをいう。フィリピンにおいても株式といえば一般的には普通株式のことをいう。日本の株式同様に株主総会において議決権を行使したり、余剰利益の配当や残余財産の分配を受け取ったりする権利があります。

優先株式 (Preferred Share/Stock)

普通株式に対して配当や残余財産を優先して受ける権利を有する株式のこと。また定款に優先株式に関する規定を定めることによりその他の特権を付与することも可能。額面価格のない優先株式は認められません。

償還株式 (Redeemable Share/Stock)

事前に償還期限を定めることとし、償還期限後に分配可能な剰余金の有無にかかわらず、会社は償還株式を株主より買い取ることができます。償還株式の発行の際には定款に当該株式についての規定を定めておく必要があること及び株券にも規定を明記しておく必要があります。

創業者株式 (Founders’ Share/Stock)

取締役の選任時に独占的にその選任権が付与される。創業者株式が発行された場合、普通株式を含むその他の株式を保有する株主には有効期間が経過するまでは、役員の選任に関する権利は付与されません。役員選任に関する有効期間は5年を超えない期間とし、SEC(Securities and Exchange Commission)から承認された日から有効となります。

自己株式 (Treasury share/Stock)

自己株式とは先に発行済みであるものの、その後に何らかの方法により会社が保有することとなった株式(例:買戻し、償還、寄付行為等)のことであり、自己株式となった株式は取締役会の承認を経て消却や再び売りに出すことができます。

■一口アドバイス
株券不発行株式
株券が発行されない株式を言う。通常は株式の発行に伴い株主に株券が交付されるが、株券を発行しないことも認められる。株式の情報や譲渡等の内容はSECより発行される株主名簿に記載される。譲渡を行う際にはキャピタルゲイン税や印紙税を納付した上で、BIRより登録許可証明書(CAR:Certificate Authorizing Registration)の発行を受けることに留意が必要である。

存続期間 (会社法11条)

改正前の会社法では会社の存続期間は最長50年間と会社法で定められており、定款変更にてさらに50年間の存続期間を延長することができるとされていたが、2019年2月の会社法の改正で存続期間に関する条文は撤廃された。会社法改正前に法人設立証明書を発行された会社についても、存続期間の定めのない会社として扱われます。

会計年度(Calendar Year and Fiscal Year)

12月末で終了する年度(1年間)を暦年(Calendar Year)というのに対して、12月以外の月末をもって終了する年度(1年間)を会計年度(Fiscal Year)といいます。フィリピン国内の多くの企業が税務処理と連動して暦年を採用していますが、上場企業を親会社に持つ日系法人はグループで会計期間を統一するために3月末を会計年度末とすることがあります。暦年を採用する場合も会計年度を採用する場合もSEC及びBIRへの届出が必要となります。

資本金 (会社法12条)

株式会社は他の法律による定めのある場合を除いて最小資本金についての制限はありません。

■一口アドバイス
授権資本 (Authorized Capital)
株式会社の定款に明示され,将来発行する権限を授与されている株式総数。設立時に発行される株式総数は授権資本として定められた株式数を超えて発行することができない。設立時に発行されなかった株式は,必要に応じ取締役会の決議で随時発行できる。米英法における授権資本(Authorized Capital)の考え方を導入している。これ自体が資本の実体を示すものではない。
引受資本 (Subscribed Capital)
引受資本とは未発行株式のうち当初定められた一定の範囲内において、投資家・取締役が将来特定の価格で未発行の株式を当初定められた引受資本の株式数を上限として購入することのできる契約を締結された資本金割当のことである。言い換えると株主と会社との間の法的合意であり、将来的にその株主が引受資本を上限として新規発行株式の購入を約束されることを意味する。引受資本の割当はストックオプションと同じ動機により付与されることがあり、会社及び株主双方に一致した利害関係を生み、株主・取締役が会社に長期的に関与し、業績を上げることの努力を促すことにつながる。すなわち長期的な会社の成長を期待する意味において投資家・取締役及び会社は同じ視線に立って運営を行うことができるというメリットを得られる。引受資本を割り当てられた者は将来的に株式の値上がりによる売却益或いは配当を期待すると同時に、会社にとっては増資時の安定した資金の確保を可能とする。
払込資本 (Paid up Capital)
払込資本とは会社が株主から株式の発行と引き換えに受け取った現金或いは現物出資の時価のことを言う。払込資本は会社がプライマリーマーケット或いは相対取引で会社と株主が直接的に株式取引を行った場合に発生する。Paid up Capitalは別名、Paid in Capital或いはContributed Capitalともいわれる。払い込まれた資本金と引き換えに発行された株式には額面価格のある株式と額面価格のない株式が存在する。額面価格とは発行時に一株当たりの株式の金額が株券に記載のあるものを指し、それとは逆に額面価格のない株式とは一株当たりの金額の記載のないものを指す。額面金額以上に払い込まれた金額については、資本金としての性格を有するものの、Paid up Capitalとは区別してAdditional Paid In Capitalと表記される。
※セカンダリーマーケットで売買された株式は会社との取引で株式売買が成立するわけではないため、払込資本とは区別する必要がある。
■一口アドバイス
法人格の停止及び法的権限によるみなし解散(会社法21条)
会社が設立されてから5年以内に事業が開始されない場合あるいは組織運営がなされない場合、その法人の法的資格は停止となり、法人は解散したものとみなされる。また事業開始後であっても、その後継続的に5年以上事業が行われない場合も会社の設立許可証の取り消し事由となる。
■一口アドバイス
禁反言の原則(会社法20条)
会社としての外観を有する組織が、当該組織を正式な会社であると合理的に信頼した相手と締結した契約について、事後的に会社の不存在を主張したり、相手方からの履行請求の際に不存在を理由として債務の履行を免れることはできない。この法理は、会社としての表示(外観の存在)及び相手方の合理的な信頼が存在することをこの法理の適用要件とされており、当該組織の法人設立過程における重大な瑕疵があり「事実上の会社」として法解釈上認められない場合にも適用される。相手方も事後的にその事実を知ったことによる会社の不存在を理由に当該組織への債務の履行を免れることはない。

法人の権限と義務

  1. 会社の名前で提訴することができる。
  2. 法人の証明書及び定款に記載された期間中、会社名を継続的に使用することができる。
  3. 社印の使用をすることができる。
  4. 会社法及びその他の法律、道徳、公序良俗に反しない限りにおいて、付属定款の条文を定めること、変更すること、廃止することが認められる。
  5. 会社法に基づき、申込者に対して株式を発行すること、自己株式を分配することが認められる。
  6. 憲法及びその他の法律の定めに基づき、有価証券や社債、不動産や私有財産の購入、受領、付与、保有、売却、賃貸、抵当権の設定等、各法律に抵触しない範囲において事業上、合理的かつ必要な取引を行うことができる。
  7. 他の会社の買収や合併。
  8. 社会福祉や病院、慈善団体、文化、科学及びそれらと同等の目的を持つ団体への寄付行為。
  9. 取締役や理事、役員、従業員等への年金や退職後の福利厚生プランの立案と実行。
  10. 定款に定められた事業目的の達成のために不可欠或いは必要と認められる行為。

基本定款 (Article of Incorporation)
(会社法13条)

基本定款(Article of Incorporation)とは、会社が実在することを示す確定的証拠としてSECに提出される。SECに提出され登録された時点で法人として成立する。Article of Incorporationと似た概念にCertificate of Incorporationというのがある。Certificate of Incorporationとは提出されたArticle of Incorporationが会社法所定の要件を満たしていると判断された場合にSECが発行する会社設立証明書のことである。会社が法を順守して正式に成立されたことが記されていると同時に二次的ライセンスを要する業種についてはこの証明書のみでは当該事業を行えないことにも注意が必要である。会社は証書に記載された日時をもって存在が正式に認識されるが、事業開始には別途、事業許可証の取得を要する。

定款記載事項

  • 会社名
  • 事業の目的
  • 場所(本店所在地:フィリピン国内に限る)
  • 存続期間
  • 発起人の名前、国籍、住所地
  • 役員または理事の人数(15名以下)
  • 設立時役員または理事の名前、国籍、住所地

 

付属定款 (By-Law)

付属定款とは、会社の内部統治について具体的で詳細な規則を定めた文書である。会社の根本規則を定める基本定款を補足する役割を担う。取締役及び執行役の権限の具体的範囲、株主総会の場所や日時、会計期間や運営に必要な事項についても記載される。付属定款に定める規則は基本定款と矛盾するものであってはならない。

付属定款記載事項

  1. 定時及び臨時取締役会の日時、場所、招集方法
  2. 定時及び臨時株主総会の日時、場所、招集方法
  3. 株主総会における定足数と投票方法
  4. 株主代理人による投票方法
  5. 取締役、理事、役員及び従業員の資格、義務、報酬等
  6. 取締役及び理事の次年度選任の日時及び通知方法
  7. 取締役及び理事以外の役員の選任の方法
  8. 罰則規定
  9. 株式発行方法(株式会社の場合に限る)
  10. その他事業運営に必要な事項(委員会設置会社等)

 

■一口アドバイス
定款及び付属定款が承認されないケース(会社法16条)
定款及び付属定款の申請或いは変更がSECにより承認されないケースがある。主な理由としては以下の4点が挙げられる。

  1. 定款及び付属定款が実質的に所定のフォームに準拠していない場合。
  2. 定款及び付属定款の内容が明らかに違憲、違法、公序良俗や道徳的に問題があること、政府の規則等に違反している場合。
  3. 引受資本或いは払込資本に関する財務役による宣誓供述書の内容に虚偽がある場合。
  4. フィリピン人の株式等の持ち分比率が既存の法律や憲法に定められている比率に準拠していない場合。

株主

会社法上の株主の人数に関する規定はないものの発起人や取締役に関して15名以下と定められている。
発起人は会社の設立時株主である必要があるが、株主は発起人である必要はない。株主の主な権利は議決権の行使や配当及び残余財産の分配を受けることである。株主により開催される株主総会は会社の最高意思決定機関として位置づけられ、経営に関するあらゆる決定権を有している。

株主総会

定時株主総会 (Regular Meetings of Stockholders)

会社は毎年4月15日以降或いは付属定款に記載された日時に定時株主総会を開催することが求められます。開催の21日前までに通知書面をメールやその他の方法での送付が必要となる。開催場所は本店所在地のある市などに限定されるが、基本的には本店の会議室等で行われることが一般的です。

臨時株主総会 (Special Meetings of Stockholders)

臨時株主総会は、必要と認められるときには随時開催されることとなります。開催の1週間前にまでにすべての株主への通知書面をメールやその他の方法での送付が必要となる。開催場所は定時株主総会同様に本店所在地のある市などに限定されるが、基本的には本店の会議室等で行われることが一般的です。

普通決議と特別決議

決議内容によっては普通決議或いは特別決議に諮る議案として決議される。会社法の改正により電子的方法で遠隔地からの会議への参加や投票が可能となりました。

普通決議

出席した株主が保有する過半数の株式数の賛成が必要

  • 決算の承認
  • 役員の選任等

特別決議

発行済み株式の3分の2以上の決議が必要

  • 取締役の解任
  • 利益相反取引の追認
  • 付属定款の変更及び廃止

以下、特別決議に加えて取締役会の承認が必要な重要決議事案

  • 定款変更
  • 増資・減資・社債の発行
  • 存続期間の変更
  • 会社の重要な資産の売却、リース、抵当権設定
  • 合併・買収

株主総会

株主総会 定時 臨時
開催日時 付属定款に定めた日時
又は4月15日以降
随時
通知 書面通知、21日以上前 書面通知、1週間以上前
場所 本店所在地のある行政区域 本店所在地のある行政区域
定足数 過半数 過半数

取締役・取締役会

定数

15名以下

選任要件

  • 過半数がフィリピン居住者であること。
  • 選任日前の5年間に禁固6年以上の刑となる犯罪を犯していないこと。
  • 会社法に違反したことがないこと。
  • 外資規制業種の場合は、外資規制により資本金の額や資本比率により外国人の比率が変わる。

選任方法

株主総会普通決議により選任される。解任は株主総会の特別決議により3分の2以上の賛成が必要となる。

執行役員

代表者 (President)

取締役会は代表者(President)を選任する必要がある。1名をPresidentとして選任することとなり、日本のような複数代表は認められません。代表者に選任されたものは財務役や秘書役を兼任できません。一人法人の場合も同様に財務役や秘書はPresidentとの兼任を認められません。

財務役 (Treasurer)

取締役会は代表者の他、財務役及び秘書役を選任する必要がある。代表者とは異なり複数名を選任することが可能です。会計面の責任を負うのが主な業務ですが、資本金等の資金の流れについての宣誓供述を求められます。秘書役との兼務が可能となります。

秘書役 (Corporate Secretary)

取締役会は代表者の他、財務役および秘書役の選任を行うこととなる。代表者とは異なり複数名を選任することが可能である。選任要件としてフィリピン居住のフィリピン人であることが求められる。財務役同様に人数の制限はありません。財務役との兼務が可能です。

その他の執行役

会社は付属定款に定めることにより、その他の役職を置くことができます。会社法やその他の規則・法律等に反しない限り役職を定めることができます。(例:副社長、経営責任者など)

委員会 (Executive, Management and Other Special Committee)

会社は付属定款に定めることにより執行委員会、経営委員会、その他特別委員会を設置することができます。取締役会により選任され、3名以上の委員により構成されます。会社法に違反しない範囲を定める或いは株主の承認が必要な事案以外において取締役会は権限の一部を経営委員会に移譲することができます。外資規制の対象業種であっても委員会の構成人員は国籍の規制を受けることがありません。
委員会を設置している会社を委員会設置会社と呼び、その旨を付属定款に明記しておきます。

■一口アドバイス
忠実義務(Duty of Loyalty)
取締役は、自己の利益よりも会社の利益を優先させ会社のために忠実に職務を遂行する必要がある。これを忠実義務という。具体的に以下の行為が忠実義務違反となる。
・競業取引、利益相反取引、機会の奪取、インサイダー取引
■一口アドバイス
経営判断の原則(Business Judgment Rule)
取締役が経営上の判断ミスによって会社に損害を与えたとしても、その判断が誠実にかつ相当の留意を払って行われたものである限り、注意義務違反ではないとする原則である。相当の注意を払って業務上の意思決定が行なわれたか否かを決定する場合、意思決定時の行為が問題となるのであって、意思決定の結果が問題とされることはない。その場合、取締役は、損害に対する責任を負わされることはなく、また、裁判所が判断の是非について事後的に介入することもない。

一人法人(One Person Corporation)
(会社法115条~132条)

今回の会社法改正で、一人株式会社の設立が可能となりました。株主は一人であるため、その人が役員であり社長でもある。会社設立から15日以内に秘書役を選任することが求められ、選任後5日以内にSECへの届出が必要となります。一人法人と区別する意味において旧会社法における組織構成の法人を普通法人とよびます。

普通法人への組織変更と普通法人からの組織変更

一人法人(One Person Corporation)はいつでも普通法人への変更が可能となり、逆に普通法人はいつでも一人法人への組織変更が可能となります。

一人法人の設立は外国人であっても可能ではあるが、その場合においても外国投資法などの外資規制及びその他の法律の規制を受けるため事業内容によっては実質的に一人法人の設立が難しい業種もあります。

FAQ

一人でも法人設立が可能になったとのことですが、日本人が一人の場合でも法人を設立できますか?
可能です。ただし日本人が設立する場合であっても、社長は秘書や財務役を兼任できません。秘書役や財務を任命するには必ず社長以外の人でなければならず、さらに会社法の他に外資規制など外国人がフィリピンで事業を行う場合の規制を順守する必要があります。
会社は土地を保有できますか?
会社の発行済み株式のうち、フィリピン人の保有割合が60%以上であれば、その会社は土地を保有できます。フィリピンにおいては、会社はフィリピン人の株式の保有割合によって法人格がフィリピン人として扱われるかどうかが決定されます。
設立に際してどのようなものが必要ですか?
会社を設立する前には必ず定款と付属定款を作成する必要があります。定款と付属定款は会社の組織構成を表すものですので、設立する前にどのような会社にするかが定款と付属定款により決定されます。