フィリピンの会計基準は2005年から国際財務報告基準(IFRS : International Financial Reporting Standards)と同等のフィリピン財務報告基準(PFRS : Philippines Financial Reporting Standards)が採用されています。2020年1月現在においてIFRSとPFRSの差異はほとんど解消されています。


フィリピンの財務報告

フィリピンの財務報告基準(PFRS)は国際財務報告基準(IFRS)を基礎として作成されています。

中小企業についてはPFRSを一部簡素化した会計基準としての中小企業向け財務報告基準(PFRS for SMEs : Philippines Financial Report Standards for Small and Micro Enterprises) による作成を義務付けています。

中小企業に対してPFRS for SMEが強制適用されており、総資産3億5000万ペソ以下もしくは総負債2億5000万ペソ以下の企業についても簡素化されているものの、原則的にはPFRSとほぼ同様の財務報告基準を用いることが求められます。

近年、小規模企業向け財務報告基準により小規模企業(総資産300万ペソ以上1億ペソ未満、もしくは総負債300万ペソ以上1億ペソ未満)を満たす企業に対してPFRS for SEが適用されます。

PFRS for SEの適用時期は、2019年1月1日以降開始会計年度からとなっており、現在ほどんの小規模企業が適用しています。

 

日本とは異なる会計基準の例

有形固定資産(IAS16号)

日本の会計基準において有形固定資産の計上時期や金額、耐用年数などは税法上の取り扱いとの差異を解消させる目的で税法上の規定に従うことが認容されており、多くの日本企業が税法基準に基づき耐用年数等を決定しています。

一方で国際会計基準(IAS : International Accounting Standards)やPFRS、内国歳入法 (NIRC : National Internal Revenue Code)では原則論や原理が明記されているのみであり、数値基準や耐用年数に関する細則に関する記述がなく、計上時期や金額、耐用年数に至るまでが経営者による合理的な見積もりをもって計上されます。

有形固定資産を資産として認識する際の要件 (資産認識の2要件-PAS16.7)。
• 当該項目に関連する将来の経済的便益が企業に流入する可能性が高い
• 当該項目の取得原価を信頼性を持って測定できる

 

新収益認識基準

新収益認識基準では、包括的収益認識モデルの適用を原則として、企業は顧客への約束した財またはサービスの移転を財またはサービスとの交換で権利を得ると見込んでいる対価を反映する金額で描写するように収益を認識する必要があります。

当収益認識基準を適用するために、以下の5つのステップによるアプローチに従います。
• ステップ1 顧客との契約の識別
• ステップ2 契約における履行義務の識別
• ステップ3 取引価格の算定
• ステップ4 取引価格の履行義務への配分
• ステップ5 収益の認識

 

会計期間

会計期間はアメリカなどの外国企業と同様に多くの企業で暦年会計期間(1月~12月)が適用されています。しかしながら日本企業の子会社である現地法人では親会社の会計期間と一致させるため3月決算或いはその他の決算期が採用されることも珍しくありません。決算期についてはフィリピンでは明確な規定がないため企業が自由に会計期間を設定・変更することができますが、その場合、SECに対して付属定款の会計期間に関する条文変更を申請し、BIRに対しても会計期間の変更の承認を得る必要があります。その場合、フォーラムショッピング(司法管轄の恣意的変更)を行う目的での変更でない旨の宣誓供述書の提出が求められます。

 

監査制度

総資産および総負債が60万ペソ以上及び四半期売り上げが15万ペソを超える企業は公認会計士による法定監査が必要となります。

 

当社では、フィリピン財務報告基準に基づく会計と監査を行っています。また日本の会計基準も熟知しているためPFRSにおいて認められる範囲において可能な限り日本の会計基準に準拠させる会計基準の策定を行うことも行います。また金額や認識の基準の違いについても丁寧に説明を行ったうえで財務諸表の作成及び会計監査を進めます。