【フィリピン税務】スーパーの買い物にも1%源泉徴収? TWAの「Goods 1%・Services 2%」を正しく理解する

フィリピンで事業をしていると、BIRから**Top Withholding Agent(TWA)**として源泉徴収義務を求められる場合があります。

TWAについては、原則として国内のsupplierへの支払いに対し、

Goods(物品購入):1%
Services(サービス):2%

のCreditable Withholding Tax(CWT / EWT)を源泉徴収するルールがあります。2025年に発行されたRR No. 24-2025でも、この基本的な1%・2%の税率は維持されています。

実際、弊社が過去にBIRから受領したTAMP関連通知にも、local/resident supplierについて「goods 1%、services 2%」と明記されています。

ここで、素朴な疑問が生じます。

「では、スーパーで会社用の商品を買ったら1%引くのか?」

「レストランで会社の食事をしたら2%引くのか?」

極端にいえば、

「ジープニーに乗ったら、運転手に“うちはTWAなので2%引きます”と言って運賃から2%控除するのか?」

ということになります。

もちろん、通常そのような運用をするわけではありません。

ポイントは「Regular Supplier」と「Casual Purchase」

TWAの1%・2%ルールを理解するうえで非常に重要なのが、regular supplier(継続的な取引先)とcasual purchase(単発・臨時購入)の区別です。

BIRのRR No. 31-2020では、TWAのlocal/resident supplierとは、基本的にTWAが継続的にgoodsまたはservicesを購入しているsupplierを指すとされています。

一方、

non-regular supplierからの単発的なcasual purchaseは、原則としてこの1%・2%源泉徴収の対象外

です。

したがって、例えば、

  • コンビニで₱500の文房具を購入
  • 出張先のレストランで₱2,000の食事
  • タクシーやジープニーを単発で利用

といった通常の少額・単発取引について、レジや運転手に「1%または2%を控除します」と交渉する必要がある、という制度ではありません。

ただし「₱10,000ルール」に注意

ここで重要な例外があります。

単発の取引であっても、1回の購入額が₱10,000以上の場合には、TWAの源泉徴収対象となります。

RR No. 31-2020では、casual purchaseであってもsingle purchaseが₱10,000以上の場合はwithholding taxの対象になることが明記されています。

例えば、

初めて取引する販売店から会社用PCを₱80,000で購入

という場合、

「初めて使った店だからcasual purchaseなので源泉徴収不要」

とは必ずしもなりません。

物品購入であれば、原則として1%CWTの検討が必要になります。

さらに「6回ルール」もあります

もう一つ注意したいのが、regular supplierの定義です。

BIRは、前年または当年に少なくとも6回取引したsupplierについて、1回あたりの金額にかかわらずregular supplierとして扱う規定を置いています。

例えば、毎月同じIT会社へ支払っている場合や、同じoffice supplierから継続的に備品を購入している場合には、典型的なregular supplierとなります。

その場合には原則として、

Goods → 1%
Services → 2%

の源泉徴収を行うことになります。

例えばサービス料₱100,000なら

Supplierからの請求額が₱100,000で、2%EWTの対象であれば、

Invoice amount:₱100,000
EWT 2%:₱2,000
Supplierへの支払:₱98,000
BIRへの納付:₱2,000

となります。

これはsupplierに「2%値引きしてください」とお願いしているのではありません。

支払者である会社がwithholding agentとして税金を控除し、BIRへ納付する仕組みです。

その代わりsupplierにはBIR Form 2307を発行し、supplier側はその金額を所得税のtax creditとして利用します。BIR規則上も源泉徴収義務はbuyer-payor側に置かれています。

「すべて1%・2%」ではない

もう一つ非常に重要なのが、

TWAだから、あらゆる支払いに機械的に1%・2%を掛ければよいわけではない

という点です。

RR No. 24-2025でも、TWAの1%・2%は、他のwithholding tax rateが適用される取引を除くとされています。

例えばprofessional feeなど、別途固有の源泉税率が定められている取引については、そちらを先に確認する必要があります。

また2025年のRR No. 24-2025では、一定のmanufacturerまたはdirect importerから卸売される自動車・自動車部品、医薬品、燃料等について、一定の場合に**0.5%**のCWTを適用するルールも導入されています。2026年のRMC No. 79-2026では、この0.5%ルールについてさらに詳細な解釈が示されています。

AJC View ― 経理担当者に「全部1%・2%」と覚えさせない

実務上、一番危険なのは、

「うちはTWAだから、goodsなら全部1%、servicesなら全部2%」

と経理担当者に覚えさせてしまうことです。

重要なのは、支払の都度、少なくとも次の順序で判断できるようにすることです。

  1. そもそも自社がTWAに該当するか
  2. 相手はregular supplierか
  3. casual purchaseであれば₱10,000以上か
  4. goodsかservicesか
  5. その取引に別のEWT税率が設定されていないか
  6. 適切な2307の発行・1601-EQ等への反映が行われているか

つまり問題は単に「1%か2%か」ではありません。

Vendor Master、Accounts Payable、EWT、2307、Quarterly Alphalistなどを一つの流れとして管理できているか

という内部統制の問題でもあります。

特にBIRの税務調査では、源泉徴収税は比較的確認されやすい項目です。

「少額だから」「supplierが嫌がったから」「今までそうしてきたから」ではなく、なぜ源泉徴収したのか、あるいはなぜしなかったのかを説明できる経理体制を整えておくことが重要です。


Official References

Revenue Regulations No. 31-2020 — Top Withholding Agents / Regular Supplier / Casual Purchase rules.
Revenue Regulations No. 24-2025 — CWT on Top Withholding Agents.
Revenue Memorandum Circular No. 79-2026 — Clarifications on RR No. 24-2025.

本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断については取引内容、相手方、TWA指定状況その他の事実関係を確認する必要があります。