マネーロンダリングの王道は今も昔も現金の国外持ち出しといわれています。いわゆる空港手荷物(ハンドキャリー)による現金の国外移転のことですが、現代の情報化社会においてフィンテックなどの技術やSWIFTを使った国外送金による資金移動はデータが送金経路を簡単に追跡することが出来ることにより金融テクノロジーが発展すればするほど匿名性を保持するのが難しくなるため、マネーロンダリングを考える人にとって現金の価値が高まるという現象が起こり得ます。
スイスのような金融立国など一部例外を除けば、ほとんどの国では一定金額を超える現金の持込や持ち出しに対して申告を義務付けています。日本の場合は、現金・小切手・手形・有価証券の合計金額が100万円を越える場合や、1㎏を超える金の地金などの移動に関して税関での手続きが必要とされています。 以前は規制対象が現金だけだったため割引債などを国外持ち出しののち現地で換金することが合法だったこともあり、一部金持ちの間で流行ったこともありましたが、現在はこの方法についても規制の対象となっています。
今もシンガポールや韓国、タイ、インドネシア、フィリピン等のアジアの銀行では日本円の口座開設を行うことが出来るため国外持ち出しされた日本円を預け入れたり、街中で米ドルなどの他の国際通貨に両替することもできるため、今でも現金のハンドキャリーによる国外持ち出しというレトロな方法はよく使われています。
また日本では今でも「地下銀行」という銀行法等に基づく免許の取得をすることなく送金依頼された資金を海外に送金する業者も存在しています。日本で住んでいる外国人や不法就労或いは日本人が資金を家族のいる本国に送金するのに利用されることが一般的です。正規の銀行よりも手数料が安く、送金が迅速であることなどから利用しやすさから、そのビジネス形態が違法なものであってもなくなることはありません。
地下銀行の海外送金方法は日本で預かった資金情報を電話やインターネット、SNSを通じて現地組織に連絡を取り、現地にプールさせていた資金を振り込むという方法がとられることになります。こうしたビジネスを可能にするのは、地下銀行は実際の送金を行っていないからです。 地下銀行が資金を日本で受け取り、現地の代理人に送金情報を共有し、現地の受取人が代理店で資金を受け取ることができるといううシステムです。送金の仕組み自体はシンプルであるため、日本で地下銀行を始める時にはスマホかPCがあるだけで始められるという利点があります。
しかし地下銀行というのは事業として送金を行うことに対して規制を行うものであって、例外として日本に住む友人から日本でお金を預かり、現地の自身や家族の口座から友人から指定された口座に送金するといったスワップ行為自体までは規制の対象とはしていません。またアメリカではそのような海外スワップ送金を互助組織として合法的に運営されていたり、イスラム系の人びとの間でよく利用されている「ハワラ」という私設送金網なども存在しています。 外国にグループ法人がある多国籍企業では会計上の相殺処理(ネッティング)により実際の資金の移動をすることのない経理処理により決済が行われています。
海外送金需要はいつの時代も存在し続けるため、送金を支援する互助組合や地下銀行のような存在は、合法違法を問わずなくなることはありません。