フィリピン共和国内または他の地域で雇用されている従業員或いは取引先などは会社の情報に触れる機会がありますが、それらの情報の中には他社や消費者などの第三者に知られたくない機密情報が含まれていることが往々にしてあり、それらを保護するためにどのような方法を用いて情報漏洩を防ぐべきか頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。会社は従業員の在職中或いは取引先との間で相手方が知りえた営業秘密やその他の機密情報の機密性を確保するために秘密保持契約 (NDA) を作成し双方が署名することで安心を得ることがよくあります。

しかし、NDA が常にどのような場面においても順守されるわけではありません。例えばふぃりぴん政府の当局者は今年初めにNDAの対象となっていたワクチンの価格に関する秘密情報を公開しました。

そこでNDA がフィリピンでどのように利用されているか、或いはNDA に法的強制力があるかどうか、そして情報の秘匿性を確実に保護するためにフィリピンのNDAに必要な最も重要な要素について説明します。

 

機密保持契約 (NDA) とは、当事者が機密情報を第三者の人物または団体と共有する或いは漏洩することを禁止する法的契約です。

フィリピンでは、NDAは職場外や従業員が退職して新しい転職先で前の会社の機密情報を保護するために或いは取引の相手先が他の客先で会社で知りえた情報の開示を防ぐために頻繁に利用されます。

 

NDAの内容には以下のようなものが含まれます。

・企業秘密
・独自技術やノウハウ
・開発中の新製品や新商品
・事業計画、戦略、戦術
・データプライバシー法で保護される機密性の高い個人情報
・一般消費を目的としていない情報

NDAは、フィリピンの民法、知的財産法、および電子商取引法の規定に準拠しているものに限り契約に法的拘束力が発生します。

NDAは民法や他の法律に準拠した形式で作成されている限りにおいては、たとえフィリピンの裁判においても有効とみなされます。 機密保持契約が裁判所の法的調査に耐えて有効性が認められるには、同意当事者の氏名と署名、秘匿情報の定義、NDAが無効になる状況、および退職後の機密保持が順守されるべきという条文規定を明記する必要があります。

 

 

最も使用頻度の高い2種類のNDAをご紹介します。

Mutual NDAs (相互NDAs)

フィリピンではビジネスNDA とも呼ばれるこの、Mutual NDAs は、双方の当事者が定義された特定の情報を互いに共有することを前提として契約上の守秘義務が定められています。Mutual NDAs は、多くの場合、合併、買収、プロジェクトや普段のビジネスオペレーション等、相互の情報交換を伴う際に交わす契約であり、それが取引開始条件の一部として扱われます。

 

Non-mutual NDAs (非相互NDAs)
これは、Employee Confidentiality Agreements (従業員機密保持契約) と呼ばれるこの契約は、当事者のうち一方に作用し、契約の一方の当事者が就業期間中に知りえた機密情報を漏洩したり他の人と共有したりすることを禁止します。 この種のNDAは、雇用主と従業員の雇用関係においてより一般的に用いられます。  雇用主は採用時に新入社員と非相互NDAを締結します。 これには従業員が就業期間中に考案・発明したものの知的財産権などが含まれます。

 

NDAsが法的強制力を有するために、NDAに含めるべき項目は以下のとおりです。

  1. 当事者の明示 : 氏名と役職名、機密情報を共有する当事者の氏名と役職名を明記する。 双方同意のうえで当該契約を締結する。
  2. 機密情報の定義 : NDAが適用される情報の範囲と項目及び内容を明記する。またそれら機密情報の共有の仕方についても定義する。 (※例 : 書面やデータによる情報は機密情報に含まれるが、雑談中に得た情報は機密とみなされない等)
  3. 除外項目や情報 : 契約当事者が機密情報の開示を許可される範囲や状況 (情報が正式に公開された後、或いは法的に開示が必要な場合など)、それらの状況や守秘義務に含まれない項目等。
  4. 契約違反時の対応 : NDA違反が認められた場合には差し止め命令、損害賠償、その他の罰則や違約金、法的措置等を明記する。

 

またNDAは公共の利益との間で相反関係が生じる場合は、守秘義務が免除され得る場合もあります。 例え従業員や取引先が会社との間でNDAを締結していたとしても、会社や雇用主の法令違反等の告発を制限するものであってはなりません。

 

 

NDAsの締結時期

従業員や請負業者は労働契約や請負契約を開始するときに締結するのが一般的です。 NDAsは、新入社員の内定通知書や雇用契約書に機密保持条項として含まれる場合もあります。

 

NDAsの海外における法的有効性

フィリピン国外或いは海外におけるNDAの法的有効性はNDAが執行される国の法律によって異なります。

一般に、フィリピンで有効かつ強制力のある NDA は、海外でも強制力を持つ場合があります。 ただし、フィリピン国内で締結された契約の有効性を相手国の裁判所の認証を受けて初めてその国での法的有効性が効力を有するなどの条件を設けている場合や、フィリピンの法律に基づいて締結された文書はフィリピン国内で公印確認やアポスティーユが必要とされる場合、フィリピンと国交のない国などではフィリピン内国法に基づき作成された契約書の有効性を一切認めない国などありますので、それぞれの国の法制度、文化的規範、公共政策上の考慮事項の違いなど、外国の管轄区域における NDA の強制力に影響を与える可能性のある要因は数多くあります。