フィリピン内国歳入局 (BIR) と財務省 (DOF) は、2022 年度中の対GDP徴税率が14.6%であったのに対して、2028年度末までに対GDP徴税率を17.1%以上に引き上げるという目標設定を行いました。BIRとDOFはこの目標設定はを達成可能な徴税率であるという確信を得ています。 高い徴税率の目標根拠として今後の高い経済成長と、税金のオンライン化及びデジタル化プログラムを通じて納税者の申告納税プロセスの簡素化を推し進めることで可能にすることができると予測しています。 経済発展に伴う納税額の増加が見込まれること、また納税者が納税するための利便性を向上させることで、より多くの税収確保が見込まれることとなりますが、これは税務調査が増加することにも繋がるため、納税者側にもより確固とした調査対策が求められることを示唆しています。
昨年の2023年1月9日、BIR長官は「移転価格の逸失利益」を認識しており、企業による他国への多額の利益移転が行われていたことと同時に、多額の税収を失ってきたことにも言及しており、 今後は「移転価格調査」は、法人税調査の主要な調査項目となりえることにも注意が必要です。
移転価格調査は、納税者と関連当事者との取引に対する納税義務の履行に関するコンプライアンスをテストするために実施されます。 移転価格の調査手順は、準備、実施、報告で構成されます。
監査の準備において、調査担当官は関連当事者との特別な関係に関する納税者のデータを収集し、取引の内容と傾向を把握します。 これは、年次所得税申告書 (AITR)、監査済み財務諸表 (AFS)、租税条約の軽減申請、および前年度の税務調査などをレビューすることによって行われます。 調査担当官は、当該納税者の事業背景と同業他社比較、製品/サービスの流れ、バリューチェーン、世界的な組織構造、取引根拠、各事業所の役割、資産と負債、移転価格対象取引から得られる利益の適正性や移転価格ポリシーについて理解を得るために、納税者との面談を予定しています。
それと同時に外国の実効税率、収入源、低税率またはゼロ税率の国または経済圏に居住/所在する関連当事者との取引、納税者の純営業利益が以下の実績に関する情報を収集することとしています。
移転価格調査の実施は次の内容で構成されます。
(1) 納税者の事業の特性の決定。
(2) TP 法の選択。
(3) 独立企業間原則 (ALP) の適用。
報告フェーズでは、移転価格に関する調査報告書が作成されます。納税者と問題の取引に関する事実の背景と機能分析、問題の取引について納税者が提案した経済分析の概要、納税者の方法論の批判と問題の取引の分析、経済分析に基づいた独立企業間価格の概要と結論、調査担当官の決定が含まれます。
移転価格に関する規則や規制は比較的新しく、移転価格に関する税務調査手法が完全には確立されていません。 しかし、BIRは移転価格専門調査チームの立ち上げを計画していることなどからもわかるように、今後は定期的な移転価格調査が行われることに留意が必要です。