
多くのケースにおいて、外国人による100%出資(全額外資)でフィリピンにホテルを設立・運営することは可能です。
払込資本金が20万米ドルを超えている場合、原則として外国投資法(Foreign Investments Act:FIA)における「国内市場向け事業を100%外資で行うための最低資本金要件」を満たすことになります。
ただし、ホテル事業において実務上もっとも注意すべき点は、DOT(観光省)の規制そのものではなく、「土地・不動産」と「付随事業の範囲」です。
1.100%外資によるホテル設立は可能
原則として可能です。
ホテル運営そのものは、通常、外国投資ネガティブリスト(FINL)において外国人に制限された業種には該当しません。
外国投資法(FIA)上の資本金要件
国内市場向け事業を40%超の外資比率(=100%外資含む)で行う場合
→ 払込資本金20万米ドル以上が一般的な基準となります。
したがって、ご質問の前提である、「払込資本金が20万米ドル超」+「ホテル事業」という条件であれば、FIA上は100%外資での設立が可能となるケースが大半です。
※ただし、実際には事業目的(Articles of Incorporation)に記載する業務内容に、制限業種が含まれていないかを必ず確認する必要があります。
2.「土地所有」に関する制限と問題
重要な点として、会社が100%外資であっても、原則としてフィリピン国内の土地を所有することはできません。
これは憲法上の制限です。
土地利用で実務上よく使われる方法
・長期土地賃貸(リース)
・以前は最大75年(50年+更新25年)
近年の法改正により、条件付きで最長99年リースが可能
外資100%会社が土地を賃借して建物(ホテル)を賃貸或いは所有・運営するのが一般的ですが、フィリピン人が土地を保有する必要がある限りにおいて土地はあくまで他人の所有物であり、事業運営をする中で土地のオーナーと利用期間や賃料でもめることも少なくありません。
3.DOT(観光省)に関する留意点
DOTは「所有比率」そのものを制限する機関ではありません。
DOTの役割は、主に以下の点にあります。
ホテルとしての基準・設備・安全性の確認
DOTアクレディテーション(認証)の取得・更新
重要な実務ポイント
DOTアクレディテーションは事実上必須
一部のLGU(地方自治体)では、DOT認証がなければ営業許可更新が困難になる場合があります
つまり、DOT上の問題は「外資比率」ではなく「基準適合・認証維持」です。
4.違反が生じやすい典型的な注意点
① ホテル以外の「付随事業」
以下のような事業を併設すると、別の外資規制が適用される可能性があります。
小売店・売店
ツアーオペレーション
輸送・送迎事業
→ ホテル本体は問題なくても、付随事業で違反となるケースがあります。
② フィリピン人名義を使った土地保有(ダミー問題)
フィリピン人株主を形式的に使い、実質的支配を外国人が行う構造ですが、これは反ダミー法違反となり、刑事責任・事業停止のリスクがあります。
5.結論
払込資本金が20万米ドルを超えていれば、原則として100%外資でホテルを設立・運営することは可能
DOTの規則や観光法(RA9593)により、外資100%が直接禁止されることは通常ない
最大の制約は土地所有であり、
→ 長期リースを前提とした事業設計が不可欠
違反リスクは主に
①土地構造
②付随事業の内容
③ダミー構造の有無
外資100%でのホテル運営は基本的に可能ですが、付帯事業と土地の問題に注意することが必要です。