フィリピン最高裁判所は、最近の判決で、一般情報シート(GIS : General Information Sheet)に記載されているだけでは、その方が株主であることを証明するには不十分だと結論付けました。この判決は、再審請求を受けて今までの裁判所の判断を翻したものとなります。

同裁は、株式と株主名簿台帳(Stock & Transfer Book)が、企業の株主の公式な記録であることを明確にしました。

この判決は2025年4月21日に公布されました。最高裁第一部の判決において、LC Lopez Inc. と Conquerorがフィリピン証券取引委員会 (Securities and Exchange Commission)に提出したGISに記載されているにもかかわらず、Ma. Christina Patricia Lopez (マリア・クリスティーナ・パトリシア・ロペス)とJohn Rusty Lito Lopez (ジョン・ラスティ・リト・ロペス)は、両社の株主ではないと判断されました。その理由は、両社の株主名簿台帳(Stock & Transfer Book)に彼らの名前が記載されていなかったためです。

「判例法上、企業のGISに株主として記載されているだけでは、その者が株主であることの十分な証拠とはならない。株主名簿台帳(Stock & Transfer Book)とGISに矛盾がある場合、前者の方が優先される」と、Associate Justice Ramon Paul Hernando (ラモン・ポール・ヘルナンデス判事)による判決文が述べられました。

 

この件は、LC LopezとConquerorが新しい取締役を選出するため開催した特別総会に端を発するもので、Ms. ChristinaとMr. John Rustyは投票代理人を送って提出して参加を試みたが、両社は「彼ら代理人の委任者は真正な登録株主ではない。」としてこれを拒否しました。株主総会はそのまま議事進行し、彼らではない新たな取締役が選出されたものです。

 

2人はマリキナ市地方裁判所(RTC : Marikina City Regional Trial Court)に対して、当株主総会は自分たちが欠席して定足数不足状態になっていたため、当該取締役の選任手続きは無効であるととして異議を申し立てを行いました。

 

マリキナ市地方裁判所 (RTC) は当初、両申立人がLC LopezおよびConquerorの株主兼取締役であると判断しました。これは、両者の名前が株主名簿台帳(Stock & Transfer Book)には記載されていなかったものの、各社の一般情報シート (GIS)に記載されていたことを根拠として判断されたものです。

しかし、その上告審である控訴裁判所(CA : Court of Appeals)では、両名が両社の株主名簿台帳(Stock & Transfer Book)に記載されておらず、株式の所有権を証明する株券などの十分な証拠を示さなかったため、最終的に両名は株主ではないと判断して、RTCにおける第一審裁判所の判決を破棄しました。

わずか数年前の2022年に最高裁は控訴裁判所 (CA : Court of Appeals)の判決を破棄し、GISと証人供述がだれが株主を判断するための十分な証拠として足りると判断していましたが、当該再審請求が提出された後、最高裁は事件を再審理し、以前の最高裁判決を覆しました。

 

最高裁判所は、再審請求を認める際に、株主名簿台帳(Stock & Transfer Book)が法人の株主の主要かつ公式な記録であることを明確にしました。さらに株主が株式の所有権を証明するために、当該株主名義で発行された株式証明書などの証明書類等を提示する必要があるとも指摘しました。最高裁判所は、改正会社法第62条を引用し、株式の譲渡は、当事者間取引を除き、株主名簿台帳(Stock & Transfer Book)に適切に記録されるまで有効でないという旨を定められていることを表明した。

このケースにおいて、最高裁判所は両名が株主台帳に自身の名前がないことに対する異議を申し立てたものの、自身が真正な株主であることを示す十分な証拠を提示できなかったと述べました。したがって、彼らは記録上の株主ではなく、彼らの株主総会からの排除は定足数に一切の影響を及ぼさず、取締役会選任手続きは有効に決議されたと判断しました。